短編
□終わらない恋話
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「お邪魔しまーす。」
「あら、いらっしゃい名無しさんちゃん。」
「恋日ちゃんいます?」
「あの子まだ起きてないみたいなのよ。名無しさんちゃん、悪いけど起こしてくれないかしら?」
「いいですよ。」
珍しく今日の分の仕事がすべて終わり、する事が無くなった私は元同僚の家へと足を運んでいた。
見なれた玄関の横についているインターフォンを鳴らすと少し間があっておばさんの声がした。
簡単に挨拶を交わした後私は元同僚の恋日を起こすべく二階に上がる。
「あ、どうも」
「あら弟君こんにちはー」
恋日の部屋のドアを開けようとした時、タイミング良く隣りの部屋のドアが開いて恋日の弟君が顔を覗かせた。
「姉貴まだ寝てると思いますよ。」
「うん、だから今から起こしに行くとこ。」
にこーっと笑ってみせるとまじまじと顔を見つめられた。
いやん、お姉さん照れちゃう。
「どうかした?私の顔に何かついてる?」
「あ、いや、その…」
「ん?」
「綺麗だなって思って…」
「…。」
ほのかに頬を染めてそう言うと弟君はバタンと勢いよく扉を閉めてしまった。
年下に褒められたのなんて何年ぶりだろう?
「恋日ー入るよー。」
軽くドアをノックしてみても反応が無かったので、ゆっくりと開けて中の様子をうかがってみる。
「………。」
地震でもあったかのような部屋の現状にしばらく言葉を失う。
どしたのこれ、てかどうやってベッドまで行くよ?
「おーい、恋日ー」
部屋には入らずにもそもそと動いている布団に向かって呼びかけた。
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