短編U

□今日は何の日?
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「リン、お菓子いる?」
「え?いいんですか?」

ぼーっとモニター画面を見つめるのに飽きた私は、隠してあった箱の中からチョコのお菓子を一本取り出し、リンに聞いた。

「この間現世に行った時に見つけたの。サクサクしてて美味しいよ」
「ありがとうございます!」

リンはさっき食べていたお菓子のかけらが付いたままの顔を綻ばせながらお菓子の袋に手を伸ばす。
私はその手をひょいと避けながら持っていたお菓子を口に銜えた。

「あの…ななしさん?」
「現世の雑誌に、このお菓子はこうやって食べるって書いてあったの」
「え」

それを聞くやいなや、リンの顔が赤く染まる。
実際には、こうやって食べるではなく、こうやって食べるゲームがある、だが。

「リン、お菓子いらないの?」
「いや、あの、欲しいんですけど…」
「じゃあ早く食べてよ」
「…あ、あのっ!それじゃあ、いただきます…」

なかなか煮え切らない態度のリンを急かすように言うと、結局は羞恥心より現世のお菓子を食べてみたいという気持ちが勝ったのか、私が銜えている方とは反対の方へと口をつけた。

「…」
「…っ」

サクサクサクサクとお菓子を食べる音が耳に届く。
だんだんと短くなるお菓子の長さ。
未だに顔を赤らめてお菓子を食べているリンと目が合う。
すると、リンの耳が真っ赤に染まった。

「ん…」

ちょうどリンの唇が触れるという時、お菓子は歪にぽきりと折れてしまった。

「うん、やっぱり現世のお菓子は美味しいね」
「そっ、そうですね!」

口の中に残ったお菓子を飲み込んで、私は袋の中からもう一本お菓子を取り出して、それを再び口に銜えた。


(ん、リン)
(あっ、あの、僕もう、)
(お前ら仕事しろ)

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