短編U

□寝過ごしたパーティ
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「きゃー!ビル似合うー!」
「ありがとうございます…」

黒いマントを身に纏ったビルはそのまま私の向かい側の椅子へと腰掛けた。
蝋燭の明りが暗い室内を少しだけ明るく照らす。
それがますます雰囲気を作り出していて、ビルが本物の吸血鬼のように見えた。

「あー、見たかったなー魔女の格好した女王様とかお化けの格好をした帽子屋とか…」

温い紅茶に口をつけ、クッキーを一枚手に取った。
首から上が無い人形のような形のクッキー。
すぐにこれを作った人が誰か分かり、私は苦笑を漏らした。

「ななし…アリスが貴女にこれを…」
「えっ、アリスが私に?」
「はい…」

差し出された小さな箱を受け取り、そっと開ける。
すると、ふ…と甘い匂いが広がった。
小さなそれを手のひらの上に乗せると、ビルの視線が私の手に落ちる。

「か、可愛い…!」
「よく出来ていますね…」

まるで本物のお菓子のようなキーホルダー。
左右に振る度にちりちりと小さく鳴る鈴はチェシャ猫の顔を思い出させた。

「次にアリスに会った時にちゃんとお礼言わないとね」
「…そうですね」

湯気が立っているカップを置いて、ビルは言った。
私は美味しいクッキーも焼こう、と二枚目へ手を伸ばして思った。

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