短編U
□空中散歩
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おぼつかない足取りで店を出ると、送って行こうか?と言う友達の誘いを断り、私は一人で歩き出した。
空には満天の星空が輝いている。
「う…」
少し飲み過ぎたせいか、気分が悪くなってきた。
やっぱり送ってもらえばよかったかな…。
なんて考えていると、突然額に鈍い痛みが走った。
「っつ!…あ」
反射的に額へと手をやり、ぶつかった物を見上げると、私の体はそのまま後ろへと倒れ…
「はぁー…何してんねん」
「あ、え?あ、真子」
真子は溜め息を吐きながら私の膝の裏に腕を回し、首の後ろから肩へと手を置くとそのまま私を持ち上げた。
「何してんの?」
「見たまんま、お姫さんだっこや」
真子の口元がにぃ、っと弧を描いたかと思うと次の瞬間、私達は空中を飛んでいた。
「降ろして」
「あかん」
「何で」
「降ろしたら一人で家まで帰る気ィやろ?」
「…」
星空に負けないくらい輝く夜景を見つめる。
あー、綺麗だなー…
「オマエは一体何考えてんねん」
「…夜景が綺麗だなと」
「そう言う意味やない」
「そうですか」
何となく気まずくなって、口をつぐんだ。
冷たい夜風に当たったからなのか、酔いも覚めてきたらしく先ほどまでぼんやりとしていた頭がはっきりとしてきた。
「真子、もう一人で帰ったりしないから降ろして」
「しゃァないなぁ」
真子はそう言って地上へと降りると、ゆっくりと私を地面へ降ろした。
空中散歩
(ななし、少し腫れてんで)
(あ、帰ったら冷やさなきゃ)
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