短編U

□しおらしい君はどこに
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本田さんと耀さんが慌ただしく出て行ってしまって、部屋にヨンスと二人っきりの私は困っていた。
口を開けば機嫌を主張し、遊んでくれとせがんでくる。
せがんでくるだけならまだいいが、私の胸を触ろうとしてくるのだ。
…こんな平べったい胸、触って何が楽しいんだろう?

「ななしの起源は俺なんだぜー!だから俺と遊ぶんだぜー!」
「ごめんね、起源はヨンスかもしれないけど、私は本田さんのものなんだ」
「え…」

咄嗟に思いついた言葉が口をついて出た。
「それでもななしは俺と遊ぶんだぜー!」なんて言われると思っていたのに、ヨンスからは意外な反応が帰ってきた。
何でそんなに…
思った瞬間、ぎゅっとお腹に腕が回されて、抱きつかれてしまう。

「…よ、ヨンス?どうしたの?」
「…」
「おーい…」

段々と力が強くなる腕の締め付けが苦しい。

「ななしの起源は俺だから」
「ん?」
「俺から離れるなんて許さないんだぜ…」

私の肩へと顔を埋めたヨンスは、小さな声で呟いた。
いつもと違う泣き出しそうな声に戸惑ってしまう。

「…ヨンス、大丈夫。私はどこにも行かないから、ね?」
「…」

宥めるようにヨンスの頭を撫でる。
静かな部屋に、時計の針の音だけが聞こえる。

「ななし…」
「ん?」
「……ありがとう」
「え?」
「っ何でも無いんだぜ!ななしのおっぱいの起源は俺なんだぜー!」
「ちょ、触るな!」


しおらしい君は何処に


(なっ!なにしてるあるかお前ら!)
(耀さん、助けて!)

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