短編U

□あなたと共に!
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「ヒナタ様、よーく見ててくださいね」
「う、うん…ていうか様なんてつけなくていいよ、ななしちゃんはもう私と同じ忍なんだから…」

遠慮がちに言うヒナタ様にそれはできませんよ、と言いながら手のひらにチャクラを集中させる。
手のひらの上にある水達が次第に空気を取り込み渦状になって小さな渦巻きのような物が出来上がった。
チャクラが乱れない様に意識を集中させてゆっくりと手のひらを水面から上げるとちゃぷんと音がして、逆三角形の渦が私のてのひらで回った。

「わ…ななしちゃんすごい…」
「でしょ?」

楽しそうに笑うヒナタ様を見て私は心の中でほっと溜息をついた。
先ほど行った任務でも、ヒナタ様の調子がどうも良くなかったようだったからだ。

「おーい、ななしー、ヒナター、そっちの湯加減どうだー?」

不意に壁の向こうからキバの声が聞こえ、綺麗に手のひらの上で回っていた水がちゃぷんと音を立てて元に戻ってしまった。

「キバ、こういう公共の場ではあまり叫ばない方が良い。何故ならお前の声は普段から大きい。よって他の客に迷惑をかける恐れがあるからだ」
「んだよ、他の客つっても誰もいねーじゃねーか」
「やっぱりあの二人は一緒の時間に入らない方がよかったみたいですね」
「そ、そうだね」

シノの窘めるような声と、キバの不服そうな声を聞いてヒナタ様は困ったように笑った。

「こっちはいい湯加減だよー」
「お、そうかー。こっちはちょっと熱ぃみたいなんだが」
「の、のぼせないように気をつけてね?」
「おう!サンキューヒナタ!」

私が天井からヒナタ様へと視線を戻すと白い肌が先ほどよりやや赤みを増していた。
それと同じように顔全体も赤く染まっている…。

「大丈夫ですか…?」
「わ、私そろそろ上がるね」

胸元のタオルを押さえながら立ち上がったヒナタ様。
慌ててそれに続くように立ち上がると私はヒナタ様の後を追った。


あなたと共に!


(ヒナタ様ー、待って下さーい)
(ひ、一人で大丈夫だから…)
(まぁまぁそうおっしゃらずに)

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