短編U
□宇宙人が来た!
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「地球人の肌って柔らかいんですねー」
「あの…いい加減離してもらえまふぇんか?」
「あともう少しだけいいじゃないですかー、減るものでもないし」
「いや、あの、帰って夕飯の支度しないと…」
頭をぐいっと上に向けて、先ほどから私の頬で遊んでいる宇宙人を見上げる。
後ろに見える空がその宇宙人の色と同じオレンジ色に染まってしまっている。
「…わかりました」
意外にも素直に離れた手に、安堵の息を漏らす。
冷たい石の上に長い間座っていたせいか、お尻が痛い。
土管から立ち上がり、軽く体をひねると腰がごきっと鳴った。
「それじゃあ、私帰りますんで…ロミオさん?」
「…」
「あの…」
「いいんです…どうせ私なんか…」
ううっ、と嗚咽を漏らして顔に手を当てたロミオさんを見て私はぎょっとした。
また明日も(多分)会えるのに、何も泣くことはないと思う…
「だ、大丈夫ですか?」
「今日はここで一人寂しく夜を明かしますから…ひっく…」
「…あの、うち、来ます?」
「いいんですか!?」
私がそう言うと、ロミオさんは先ほど泣いていたのが嘘のように、ぱぁっと顔を輝かせる。
さっきのは嘘泣きだったのかと思った時にはもう遅く、ロミオさんは素早く私を自分の背中に乗せると、音を立てて飛び立った。
「しっかりつかまってて下さいねー!」
「それ、飛ぶ前に言って欲しかったです!」
そして私はロミオさんの体をしっかり掴み、家へと無事到着したのだった。
宇宙人が来た!
(た、ただいま…)
(おう、ななし。遅かった…な…)
(お邪魔しますー。あ、マタタビくんこんばんは)
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