あー、久々のイタリア!
仕事柄、世界中を旅してる上、一つの国に長く滞在することがない私は、どの国に行っても気の置けない友人などいない。
けど、ここは別。
「ディーノ!」
「おっ、やっと来たな。」
彼とは以前イタリアに来たとき、たった一週間共に過ごしただけ。
あれから一年経ってるのにほぼ毎日メールのやりとりはしていた。
他の国の友人ともメールはするけど、やっぱり毎日ってのはね。
「今回は長いの。1ヶ月ここにいる。泊めてもらってもいいかな?」
だからディーノには特別親しみを感じてる。
でも、それが私だけとも限らない。如何せん過ごした時間が短いのだから。
「おう!1ヶ月と言わず、ずっとここにいてもいいんだぜ?」
「あはは!ディーノは大袈裟だなー。でも万が一次の依頼が決まらなかったら、滞在期間延長するかも。」
と言っても、1ヶ月で次の行き先が見つからないわけない。何しろ私、腕だけはいいのだから。
「そ…っか。」
なぜかディーノが沈んでいる気がするんだけど。
あっ、もしかして私が長く泊まるの迷惑なのかな?
「あ、あのな!ずっといていいってのは…つまり!」
「いや、いーよ。別に本気にしてるわけじゃないってば!」
私はわざと明るく言う。嫌われてるから泊めたくないとは限らないから。きっとディーノにも事情があるんだよね?
「や、じゃなくてな!オレとずっと一緒にいねぇか?」
は?意味がわからんぞ。ずっとイタリアにいるんじゃ、私の仕事は成り立たない。それはディーノも知ってるはずなんだけどな。
「あっ、意味、わかってねぇな。オレが言いたいのはな…。」
囁かれたのは魔法の言葉。
生き急ぐ私に穏やかな日常を……
幸せをくれる言葉。