書
□それは、きっと恋。
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ガシャン。
フェンスが揺れる音で現実へ意識が引き戻される。
体を起こし音の方向へ目を向けると--------
「あっ… 」
フェンスの上に人がたっていた。
フェンスのすぐ外側は足場がなく、落ちたら確実に死ぬだろう。
だけど、だけれど
危ないとか
止めろとか
そんなことよりも
綺麗。
そんな二文字だけがすっと頭にうかんだ。
真っ青な雲一つない背景に
彼の頭の朱色はあまりにも美しく思わず口をひらいたが息がつまってうまく言葉がでてこなかった。
「危ないよ?」
粟立った心を落ち着かせやっと発した言葉は意外にも短かった。
その声で振り返った彼は
驚いたのか目をみひらいた。
空をそのまま移した瞳。
綺麗。
また同じことをおもった。
でもその蒼は悲しみで彩られた
そして
ゆっくり
ゆっくり
まるで
スローモーションのように
空へと傾いて
そして下へ…
私は下へ降りた
彼の頭は朱色から赤へと変わっていた。
「君が好き、だったよ。」
それは少しだけ哀しみのこもった声だった。
そして
静かに彼の唇へキスをした。