□やる気なしです!
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無双学園の三時間目。
真夏の暑さにも関わらず
グラウンドでは賑やかに
体育をしている生徒達の
笑い声が響いている。
そのグラウンドの隅から
女子のバレーを熱心に
見つめている生徒が二人。

「分かるか、幸村」

「はい、とてもよく分かります三成殿」

「こんな所にいたのか二人とも。なにを話しているんだ?」

「「左近(殿)の腹チラ」」

「…不義である!」

そう、三成と幸村が
見ていたのは体育の
先生である島左近。
女子達に無理矢理
引きずり込まれたのだろう、
一緒に混ざって
バレーをしている。

しかし流石は体育の
担当である。
高くトスが上げられれば
左近は素早く飛び
スパイクを決めていく。
その度に女子は黄色い
歓声を上げ笑顔で左近と
ハイタッチするのだ。

その様子は三成にとって
微笑ましくもあったが、
羨ましくもあって面白くない。
女子と遊びたい訳ではなく、
左近が自分以外に
笑いかけたり触れたりするのが
許せないのだ。

左近に色目を使っている
女子達に三成は左近の
スパイクが顔面に
当たらないかとぼんやり
思ったが、やはり左近は
相手が女子だから
手加減しているらしく
それは期待できない。

唯一の楽しみといえば
左近がスパイクを決めようと
飛んだ瞬間にシャツから
チラチラと見える
腹チラぐらいだった。

「全く…モテる恋人を持つと苦労するな」

「分かりますよ三成殿。慶次殿にも変な虫がいっぱい寄ってきて大変なんです。孫市とか孫市とか孫市とか」

「…三成、幸村。よく分からんが大変なのだな!ところで授業をサボってると伏犠先生の鉄拳がry」

「五月蠅い、バ兼続。今左近が笑っているのだ。しっかり目に焼き付けてエネルギーを補充しなければ」

「そうですよイ兼続殿。それに伏犠先生も忙しくてそれどころじゃないみたいですし」

兼続がちらりとサッカーを
している男子達を見ると
一緒に混ざってサッカーを
している伏犠が見えた。
その後ろにひっつくように
太公望と悟空がいて
尻を触ったりズボンを
脱がそうとしたりして
その度に伏犠は振り返り
怒鳴る、の繰り返し。

「…確かに忙しそうだな」

「だろう?兼続も一緒にどうだ」

「む…かまわん」

兼続は渋々二人の横に
腰を降ろした。
それを見て再び三成が
左近の方に視線を戻すと
ばちり、と目が合った。

「あ」

左近は暫くして怒った
表情を浮かべジェスチャーで
サッカーをしている
男子達を指差している。
戻りなさい、授業を受けろ、
と言いたいらしい。

「左近先生がなにか言っているぞ」

兼続がそう言ったが
三成はじっと動かなかった。
さらには左近から
目を逸らして大袈裟な
欠伸なんかして見せる。

全て作戦だ。

こうすれば絶対に左近は
傍に来てくれる。
それが説教だとしても
三成は全く構わないのだ。
餓鬼だと思われても
餓鬼なのだからしょうがない。
こうするしか左近と話せる
術を三成は知らない。

「あ、」

幸村が呟いた声に再びちらりと
左近がいた方を見ると、
眉間に皺を寄せて大股で
こっちに歩いてくる左近が
見えて、三成は微笑んだ。

きっと一言目に
「なにしてんですか」
と来るだろう。
そしたら
「お前の腹チラを見ていた」
と答えてやろう。

三成はそんな事を考えながら
笑みを深くした。









やる気なしです!

(なにしてんですか!)
(ほら、きた)










 
 

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