いろいろ6

□救えない
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「雨、」


ぽつぽつと窓を叩く音がしたかと思えばその音はすぐに激しくなった。がたがたと風に揺さぶられる窓がかわいそうだ。私の視線は自然とポケギアを向く。数分しない内に鳴り響くだろうコール音を予想して。

今夜はダイゴさんがうちに来る日だったけれど、こんなに荒れた天気ではいくら彼のエアームドが鍛え上げられた強靭なポケモンだとしても、彼はこの家に来る事はできないだろう。今朝見た天気予報でも今夜は酷い雨だと言っていたから予想はしていたけれど。

だが、待てども待てどもポケギアが静寂を破ることは無かった。もしかすると、彼はまだなんらかの仕事が終わっていないのでは?もしくは数日前に交わした今日この日の約束など忘れて、また洞窟に籠っているんじゃ?考えても仕方無いので、空になったコップに飲み物を注ぐためにソファから立ち上がる。それと同時に、少々乱暴なノックが静寂を破った。気のせいかと思ったけれど、雨音の規則正しい荒々しさとは違う音が、再び扉を叩く。


「はい、」

「僕だよ、ダイゴだ。」

「え。」


一瞬耳を疑うけれど、確かにその透き通るような声は聞き慣れたダイゴさんのそれで、扉を開いてみれば予想通り見慣れた彼の姿。びっくりしたが、その訪問に驚く暇は無かった。何故なら彼は頭のてっぺんから爪先まで
ぐっしょりずぶ濡れだったのだ。慌てて洗面所からタオルを持って玄関に戻ると、ダイゴさんは眉を下げ、申し訳なさそうに笑った。


「ごめんね、こんな天気だから来るの止めようと思ったんだけど…」

「いえ、いいですけど、風邪ひいたら大変です。」


お風呂、直ぐ準備しますね、そう言うとダイゴさんは緩く笑ったまま私の手を掴んだ。ひたり、ダイゴさんのスーツの袖口が私の腕に張り付く。


「今日、七夕でしょう?」

「ああ、そういえば、そうですね。」


そういえば、なんて。本当はそんなこと知っているし、だからこそ今日、本当はどうしてもダイゴさんに会いたかった。何故かって、そんな明確な理由は持っていないけれど。


「だから、どうしても会いたくて。」


ダイゴさんが私の思う事をそっくりそのまま
言ったものだから、思わず答えも求めてみたくなる。


「どうしてですか?」

「さあ、織姫と彦星があっているのに僕らが会えないのが何だか悔しいのかもね。」

「雨、降ってますよ。」

「ああ、雨が降ってるのは空の下だけだから、天の川はちゃんと出てるんだよ。」


ダイゴさんの髪は顔に張り付いて気持ち悪そうだ。それなのにあんまりにも涼しい顔で笑むものだから、不快感を感じているのかがどうも分からなかった。(だけど絶対、そのスーツを脱ぐのは張り付いて気持ち悪いだろうなあ。)


「そうなんですか、じゃあ、雨でも毎年会えるんですね。」

「雨なんか障害じゃないんだよ。」


僕にとっても、なんて気障な言い回しをしてから、ダイゴさんは握ったままの私の手に唇を寄せた。夏だというのに、その唇は酷く冷たい。気障、そう言うと彼は笑みを濃くし、少し重くなったタオルを私に被せる。ぐずり、水をたっぷり吸った彼の靴が拗ねた様に鳴いた。


「まあ、本当は七夕とか、織姫彦星の逢瀬が上手くいくまいが、関係無いんだけど。」


ダイゴさんの冷たい唇が今度は私の頬にあてられ、唇とは対照的に熱を帯びた舌が私の首筋を撫でる。


「気障な上に下品なんて、」


救えない
(どうせ、お風呂一緒とか言うんでしょ。)
(やっぱり、バレた?)





100708
突発すぎてまとまらない


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