短編集

□ふたつの記念日 NA
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6月17日。



俺にとっては
大事な人が生まれた大切な日。




「なにがいい?」

「え?」


にのは何が?と言う顔をする。
何がって……今日はにのの誕生日でしょう?


「プレゼント。欲しいものなんでも買ってあげるよ」

「あぁ」


自分の誕生日のことなのに、
興味なさそうー……
ふと、
甘えるときの顔になったにの。
それは悪戯を思い付いた子供のようにも見える。


「して欲しいこと、じゃだめですか?」

「たとえば……?
ジュース買ってくるとか?」

「ん?んふふ……
今日一日中、言うこと聞いてくれればいいんです」


今日は俺の誕生日ですから、と付け足してじっと見つめる。

ヤバい……これは誕生日を理由に、なにかさせる気だな。

パシリでも、松潤の寝起きに悪戯(半殺し)とか、
りーだーの釣り道具を壊す(あの人は怒ったら、一番怖い)とか、
そういう悪戯風味はやめてほしいなと思っていた俺の考えとは反対に、




「じゃあ、にのって呼ぶのやめてよ」

言うことは簡単だった。

「え、じゃあ、に……」
「ストップ、あんたは馬鹿か」


あ、にのって呼んじゃダメだったんだ。

「なんて呼べばいい?」


言い出したのはにののくせに、
恥ずかしそうに、俺から視線をずらした。


「下で、呼んで」

「か、ずなり……//」

それがなんだか、俺も恥ずかしくて、顔が赤くなってくるのがわかる。


うわっ……!!
いつもにのって呼んでたから、
変な感じ!!
それはにのも同じだったみたいで、
「なんだかくすぐったい」

ふふっとにのは真っ赤な顔で
笑った。


「今度は俺の名前を呼んで?」

「んふふ、しょーがないですねぇ……



雅紀、大好きですよ」



6月17日。
それは、初めて下の名前で呼び合った記念日。

そして、もう一つ。
大切なあなたが誕生した
僕にとって一年一番特別な日。
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