らばーひーろー
□遥かな今日を、生きるひと
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両親は、俺が小学生になる前に離婚した。
俺には双子の兄がいて、父親は兄を引き取り、俺は母親に引き取られた。
それから、すぐだったんだ。
父親が仕事の都合で、関東に引っ越したのは。
俺たち家族は、もともと関西に住んでいた。
その頃の俺はまだまだガキで、何が起きたかもわからず、なぜ兄弟と父親と離れなければならないのか理解できなかった。
それでも、漠然とした不安だけは感じていたんだと思う。
母親に、何度も何度も尋ねた。
どうして、兄がいないのか。父親はどこに行ったのか。
だけどその度に、母ちゃんが悲しそうに笑うから。
その度に、「ごめん」とか細い声を出すから。
だから、いつしか俺は問いかけることをやめた。
母ちゃんのそんな顔を、見たくなかった。
母ちゃんにそんな顔を、させたくなかった。
触れてはいけないことなのだと、悟ってしまったんだ。
もう……母ちゃんと二人きりで暮らしていく。
兄と父親のことは忘れなければいけないんだと。
それでも、根拠はないけれど。
いつかまた会える。
そう、信じていたんだ。
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