シンフォニア・デスティニー
□プロローグ
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1日のほとんどが闇に包まれた町。
人の通りはなく、静まり返っている。
町の奥にある神殿。
黒曜石でできた柱や壁。その柱には松明が燃え、うっすらと辺りを照らしている。
「何かあったのか?」
ゆったりと静かに、それでもよく通る低い声が響く。
声を掛けられた男は振り返らず、目の前の壁を見上げていた。
「力が弱くなってきている。そろそろ限界だ。」
「最後の器は何年前だ?」
「さぁな。・・・・・・確か、40年前か。」
男に近づき聞くと、さほど興味もなく答える。その視線は相変わらず壁へと向けられていた。
「結構持たなかったな。前のは60年だっただろう?」
「まだ、未成熟だったらしいな。コレでは1年も持たないだろう。」
瞼を閉じため息を吐くとその場を去る。その行動は全てやる気を感じさせるものではなかった。
男が去った後、その場に残された男は壁へと視線を戻す。
「今度の器はどれだけ持つか・・・。」
黒曜石の壁を這うように流れ伸びている黒塗りの化石に様な樹の幹。
それに触れれば元の幹のざらつきはなく、すべすべとした感触がある。
だが、男はそれに触れる事はなく去ろうとした。
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