Blood Type
□動きは流れた
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翌日、無事任務も終わり報告書を書き終えた2人は余分な体力を消費しまいと思い朝一番に宿を出た。
すっきりと晴れていて曇一つない。
早速京都駅の方に向かう為街中を歩いていると、平日だと言う事もあり学生やサラリーマンが多かった。
朝8時。通勤ラッシュの時刻に当たる。
電車の中は混んでおり車は列を作りながら走り、交差点を渡る人は皆急いでいる様子で。
優雅に2人は行動しているも、本来ならば他の学生と同じように慌ただしく電車に乗り込んでいるだろう。
組織に所属していては学校に通う時間が無いのだ。
義務教育が終わった年齢になれば、特別な理由が無い限り学校には行かない。
勿論両立できるのであれば構わないがそれにより周りへの危険性が上がってしまっては元も子もないからである。
義務教育中であれば土曜日や日曜日のみの働きを行い、
ある程度戦闘能力も付いていれば通っている場所での駆除も任される。
奈津も以前までは義務教育中であった為に切羽詰まったスケジュールをこなし、長期に渡る休み期間中は他のHuman Seed分の任務を率先して行っていた。
神崎は親が不在で同じ双子の兄がいるのだが、その兄も組織に携わっていた為あまり学校には居られず生活の中心がずっと本部からであった。
清水寺の周辺に来た時、奈津は寄りたいと言う。
今回は時間に余裕がありある程度遊ぶ時間はあった。
幸い朝の為人通りもわりと少ない寺で、多少人の声が聞こえたとしても通常より静かである。
季節は過ぎてしまったが、高い位置から臨む桜の木と街並みはきっと綺麗だろう。
「まだ店は開いてないな」
上に続く路地の店はまだ閉まっている所が多く、正直楽しめる気はしない。
奈津もわかってはいたのか来てはみた物のイマイチな表情を零す。
「また来ればいいかしら」
「またっていつだよ」
「きっと別の機会があるわ。ごめん、引き留めちゃって」
「いいのか?」
「仕方ないから」
奈津は残念そうに肩を竦めしぶしぶ今回は諦めた。
確かに、また別の任務が入ればもしかしたらここに来るかもしれないのだ。
楽しみは後にとっておくのだろう。
それから1時間後、予約していた新幹線が到着しており早々と京都から立ち去った。
車内では食べそびれていた朝食を口にしている。
が、昨日の夕食が遅く割と重い物だったからかなかなか喉を通らない。
食欲はあるが胃が受け付けないのだ。
仕方なく車内で渡り売りをしているワゴンを止め、スナック菓子を複数購入した。
そしてそれらを食べてしまえば後は寝るだけ。
ほんの2時間、また東京に着いてしまえば多分迎えの者が来るだろう。
本部では京都支部から電話が来ていた。
セレン宛てであり、数枚の書類を片付ける為右手にペンを持ちながら出る。
「や、セレン。朝早くにすまない」
「歩かい?久しぶりだねまったく……気にしなくて大丈夫さ」
相手は京都支部支部長を勤める白坂 歩。セレンとは同期だが年齢は大分下。
いつもスーツを着ておりプライベートにならないと軽い服装はしない。
一度も染めた事がない黒髪は一般よりも少し長めで、襟足はほんの短くだが結べる程余っている。
彼は30歳の時に支部長に就任し以来京都・大阪を中心に関西地方の治安維持に力を注いでいる。
同時は若すぎると言う事から批判的な声も挙げられたが、セレンによる推薦と周辺の人やHuman Seed達からの後押しにより無事支部長に就任する事ができた。
その真面目さと温厚な性格からとても親しみやすく理解者も多い。
仕事にも前向きで妥協は一切許さない。
そんな彼だが、未だに独身。
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