小説

□メリークリスマス!by順
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「ごめんねー、こんな遅くに」


「今更なにを」


「あはは、それもそっか。けど来てくれてありがとね」


「別に、ほっといたらいつまでもいそうだったし、その方が迷惑だから」


「うぐ…迷惑ですか」


「うん。すごくね」


これ、好感度下がってるよね?しかもすごい勢いで。


「で、何くれるの?」


「さすが夕歩。よくわかっていらっしゃる」


まあ、今日はまだ何もあげてないし、私からプレゼントがないのを不審に思っただけだろうけど。


「今日何ももらってないから、そうだと思った」


大当たりだったよ。これはもう以心伝心かも。


「それはないよ。ただ順がわかりやすいだけ」


「…いい意味で?」


「どう解釈したらそうなるの」


最近うちの姫、Sっ気が半端ないんですが。誰か理由をご存知の方はいませんか?


「それより寒いから早く」


「ん?ああ、ごめんごめん」


そうか。真冬のこんな時間じゃ寒いよね。


「じゃあ、目瞑って」


「……ちゃんと順からできるの?」


「任せてよ!」


「なら、任せたからね」


今日はいけるよ!今日くらいは私だって!
…多分。


「………」


「………」


私は夕歩の顎に手をそえて、軽く固定した。そのままゆっくり、だけど確実に二人の距離をゼロにしていく。


「…ん」


触れるだけの軽いキス。時間もそんなに長くない。けど離れた時、私はもう体があつい感じがした。…興奮してんのかな?


「…よくできました」


「ありがとうございます、姫」


「…また」


「あ、ごめん」


「いいよ、すぐ謝らなくて。怒ってないから」


「ほんと?」


「ほんと」


ぶたれなくてよかったと内心かなりホッとした。


「ていうか、服くらい着替えればよかったのに。サンタのままだよ」


「これ、ただの赤いパジャマだから。帽子は調達したけど、コスプレまでいかないよ」


「そうだったの?」


「うん。ほら、フードついてるでしょ?コスプレ用にはないもん」


「ほんとだ。気づかなかった」


「じゃあそろそろ帰ろうか」


「…もうちょっと、一緒にいようよ」


「…珍しいね。別にいいよ。どうせルームメイトは私の帰りを待たずにゲーム中だしね」


「まだやってるんだ」


「大作RPGの新作がでたとかで、ずっとやってるよ」


「ふーん。…あ、順見て」


「へ?おー、雪だ」


ホワイトクリスマスなんて中々ロマンチックじゃない?神様もたまにはいいことするねー。


「きれいだね。今年はホワイトクリスマスなんだ」


「夕歩、こーゆーの好き?」


「割と好きかな」


「へえ」


だったら来年からは降らなかった時用に紙吹雪でもつくろうかな。あ、いいこと考えた!


「ほーほーほー。メリークリスマス、いいこの静馬夕歩さん」


「……は?」


「今年はとてもいいこだったようだから、久我サンタからホワイトクリスマスをプレゼント!」


「…何、寒さでおかしくなった?」


「違うよ!ノリわるいなー。だから来年もいいこだったら、またホワイトクリスマスをプレゼントするよ!」


「悪い子だったとしても、プレゼントくれるんでしょ」


「まあね」


「サンタさんの意味ないじゃん」


「夕歩専属だからね。いつも夕歩のこと見てるんだよ。だから悪いことしてても、それ以上にいいことしてるとこも見てるから。だから夕歩はいいこなんだよ」


「どっかの宗教になかった?そーゆーの」


「夕歩教じゃない?」


「そんなのあったらやだよ」


確かにやだね。それにそんなのあったら潰さなきゃ、夕歩の教育上悪いし。


「さすがに帰ろうか。結構寒い」


「そうだね。…ねえ、順」


「んー?」


「ホワイトクリスマス、ありがとう」


「え?どういたしまして…?」


「順の方がノリ悪いんじゃない?」


「そ、そんなことないよ!えーと…来年もちゃんとプレゼントするから、いいこでいてね」


「はい、サンタさん」


うおう…。何この可愛い子。こっちみてニコって。ニコって…!


「あーもうこんな時間。じゃあ最後に、メリークリスマス、夕歩」


「メリークリスマス、順」


その後、寮にかえるまで、月の光に照らされた2つの影はずっとつながっていた。






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