小説

□1cm
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「どこ行く?」


「どこでも」


「なら買い物でもしてからイルミネーション見に行こうか。きれいなとこ知ってるよ」


「うん」


イルミネーションといえばデートの定番!雰囲気もカップルもたっぷりなあそこならキスくらいならしても平気だろう。


「服見に行こうよ。暖かいのあるかも」


「あっても買わないじゃん」


「ウインドショッピングとかいうやつだよ」


そんなわけでまずは服の店にゴー。


「…あのさ夕歩」


「何?」


「服は?」


「後で」


ユニ○ロに向かってたはずなんだけど何故か夕歩はゲーセンの外においてある大き目のUFOキャッチャーに興味津々。まったく動こうとしない。


「順、これとって」


「すごい重そうなんだけど」


「頑張って」


夕歩ここまでぬいぐるみ好きだったかなぁ。これ取れたとしてもいくらかかるか…。


「…お金くずしてくるからまってて」


そういえば今日の占い、恋愛運はバッチリだったけど金運は壊滅的だったなー。


十分後――


「ありがと順」


「どういたしまして…」


とれたけど私の財布の中はすっからかんだよ。ジュースも買えない。


「お金なくなっちゃったし、もうイルミネーション見に行く?」


「うん」


ご機嫌だな、夕歩。どこにでもありそうなぬいぐるみでここまで喜んでくれるんだし、まあいっか。ケーキ買う予定だったけど。


「行くのはいいんだけど、ちょっと早くない?」


「大丈夫だよ。そのイルミネーションのあるとこあんまり日が当たんないらしくてさ、今の時間ならもう光ってるよ」


「そうなんだ」


その後、他愛のない会話をしながら30分くらい歩いた頃、少し遠くに光ってるものを見つけた。


「あ、あったよ夕歩!もう光ってる!」


「わ、ちょっと速いよ順!」


「ごめんごめん」


そうは言うけどスピードを緩めない私に諦めたのか、夕歩も走ってついてくる。


「…結構人いるね」


「穴場らしいよ、ここ」


人の少なそうなところを探して、見つけた空間にあるベンチに適当に座る。


「寒くない?」


「走ったし、大丈夫」


「ならよかった」


…そろそろいいんじゃない?いけるよね…?


「あのさ、夕歩」


「ん、何?」


「キス、しよっか」


…言っちゃった。どうしよう?いや、よく頑張った、私!きっと夕歩なら…!


「いいよ」


「え、マジで?」


「うん。まさか順からいってくるなんて思ってなかったけど」


「だろうね…。じゃあ、いい?」


「うん」


夕歩は早くも準備ができてしまったようだけど、私はというと夕歩の肩をつかんだまま深呼吸。


「………」


「へ?ちょ…」


キスするのがあまりに遅いもんだから痺れをきらしたのか、夕歩が私の首に腕を絡めてきた。


「ん…」


そのまま私は引き寄せられ、数cmの隙間はすぐになくなった。引き寄せられたときに外れた私の手は行き場をなくし空中をさまようだけ。


「ん…順」


「は、はい?」


「遅い」


「…すんません」


唇が離れたと思ったらいきなり怒られました。


「手ならいけるよ」


「キス?」


「違う。手、つなぐの」


「…ま、いっか。」


私は何の迷いもなく夕歩の右手を自分の左手でつないだ。


「手つなぐのは早いね。キスはできないのに」


「…次までにできるようにしときます」







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