Bleach

□Carum
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死覇装を着た死神たちが闊歩する瀞霊廷の中で、
ひときわ地味で静かな隊舎がある。


今日は普段と打って変わって、乱暴で下品な怒声が隊舎内に響いていた。



「4番隊ごときが俺に触るんじゃねぇ!!」


屈強そうだが体中傷だらけの男の足で、
診察台が蹴り倒される。


周りにいた看護婦が、
男の怒気に圧倒され尻餅をついた。



「おとなしくして下さい!」

「あなたは今大怪我をしているんですよ!」



4番隊の非力な男たちが、
必死で暴れまわる男を押さえつける。




「こんな傷ほっとけばなおる!
11番隊の俺が4番隊に助けてもらうなんて隊の恥だ!!」


隊員の頑張りも空しく、
男は振りほどいて帰ろうとする。



と、男はドアに寄りかかるオレンジ色を見つけた。



「さっきからドタバタ煩いと思ったら…」


「何だよテメェは!」


怒鳴る男を無視して
オレンジ色の頭に、眼鏡をした青年は呆れたように、
男の押さえつけられているベッドに近づく。



「そんだけ元気があればすぐに任務に戻れる。
今はおとなしくベッドで寝てろ」


「てめぇに何が分かる!俺は11番隊だ!こんな怪我で…」


「お前が11番隊ならなおさらだ。
戦って死ぬのがお前らの美学だろ?
戦場で死にたきゃ今は寝てろ。
そのへんで死なれても、俺が困る」


「っ!」


男は言葉に詰まる。
確かに彼の言うとおりなのだ。



「4番隊は救護専門の隊だ。
お前らに馬鹿にされていようが何だろうがその道じゃトップクラス、
そんな奴らに手当てしてもらうのが恥なわけねぇだろ」



ちっと舌打ちをしながらも、ベッドに戻った男を見て、
実は男に蹴り倒された診察台の下敷きになっていた4番隊第7席の山田花太郎が青年にかけよる。


「ありがとうございます、一護さん!」


「いいよ別に。
お前……仮にも席官だろ?もっと頑張れよ」


「あ…そう、ですよね。すいません」


一護の言葉に花太郎はシュンと縮こまる。


「…それに!
お前は俺より上なんだから敬語使わなくていいし、偉そうにしてていいんだぜ?」


「すいません…でも、敬語は僕の癖ですから」


へらっと笑う花太郎に、
一護もしょうがないか、という気分になる。


花太郎は現在4番隊の第7席。
対して一護は席官ですらない。


一護の莫大な霊力と戦闘スキル、人望故に席官依頼は何度もきているのだが、
地位と権力に全く興味がない一護は「面倒くさいからいい」といって一向に席官になろうとはしないのだ。


そして、それを知ってか知らずか
花太郎は有能で人望の熱い一護を尊敬している。



「一護さんは強くてかっこよくて、僕の憧れです」


「……何だよ、気色悪ぃ…」


「へへへ…」


一護は冗談としか取らなかったようだが
それは間違いなく花太郎の本心。





「あいつ、明日までに回復させてやってくれないか?
なるべく早く……帰してやりたいんだ」


「…はい、分かりました」


「忙しいのに…悪いな、花太郎」


「大丈夫です!一護さんの頼みですから」


「サンキュ」


一護は花太郎にむけて、眉間に皺をよせたまま嬉しそうに笑う。

花太郎も、照れながら一護に微笑みを返す。





「あの…黒崎さん…」


花太郎と談笑していると、
おずおずと4番隊の平隊員が一護に声をかけてきた。
気のせいか、顔が赤い。

4番隊皆の憧れである一護に話かけるのを照れているのだろう。



「…?何だ?」


一護は優しく聞き返す。


「あの…例の方がまた……」


聞いて、一護は深いため息をつく。
例の方という言葉だけで、隊員のいいたいことが分かったらしい。


「どうかしたんですか?」


いっきに憂鬱そうになった一護を気にして、
花太郎が問いかける。


「……何でもない。
俺、ちょっと行って来る」


「え、あ、はい。いってらっしゃい」


花太郎はイラつきながら歩いていく一護の背中を見送る。





「…いったいどうしたんだろう?」
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