Bleach

□甘い甘い蜜色の君の話
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「貴様は、一護に惚れているのか?」



ブフッ!!!!


冗談かというほど、
恋次は勢いよくすすっていた緑茶を噴出す。

昔馴染みで、兄弟のように育ったルキアから、
急に甘味処に呼び出されて何かと思えば。


「…どこをどう間違ったら、俺が一護をそんな目で見ているように見えるんだよ」


恋次は手の甲で口元をぬぐいながら、
怒るというより呆れた口ぶりでルキアに反論する。

自分に、そのような思いがあってたまるか、と。



目の前のルキアはいつも通り冷静な顔で、
あんみつをさじでいじりながら恋次に話しかける。


「なんだ…私はてっきりもう接吻の一つや二つでも済ませたのかと…」


「どんなファンタスティックな妄想してやがんだテメェ」



ファンタスティックではない、ロマンティックだ、とルキアは眉をきりりとさせて
さじを恋次に突き指し、



「一護は案外色っぽいやつだぞ?」


などと甘味処で女の子がするような話じゃないことを語り始めた。


「風呂上りで濡れた髪が首筋にはりついて妙な色香を放ったり、
たまに見せる笑顔が普段の仏頂面とのギャップで可愛く見えたり、
戦闘ではだけた着物から見える細い腰がこちらの征服欲をだな…」



恋次はルキアの熱の入った語りっぷりに、
頭をぐらぐらさせる。


とりあえず、
ルキアが一護のことを不純な目で見ていたのはよく理解できた。



「私が男であったら、すでに一護の腰が立たなくなるくらい抱いていたというのに…」


…ルキアがとんでもない性欲を持っているのも理解できた。



「だいたい俺はノーマルだ。男を好きになるわけねぇだろ」


「……貴様がノーマルだからと言って、一護を好きにならない理由にはならないな。
一護はノンケの男をも魅了する素質の持ち主だ。
現に、一護たちがこちらの世界に来るようになってからまだ数ヶ月だというのに、
一護に寄ってくる男は数多くいるだろう?」


それはおそらく、一護の人望と力と社交性のおかげなのだろうが、
ルキアの頭は捻じ曲がった解釈しかできないようだ。

それを聞いて恋次も、まあ確かに、とか思ってしまうあたりはやはり馬鹿なのか。


「市丸ギンはあからさまに一護を狙ってベタベタベタベタ触りに来るし、
更木剣八などは一護に戦いを挑んでは着物をボロボロにするし、
浦原はすぐに一護を自室に連れ込もうとするし、
阿近殿はやたらと一護に変なものを飲ませて実験しようとするし…」


「どんなマドンナだよ、一護は」


「ともかく、私は他の輩に一護を奪われたくないのだ!
他の輩に取られるくらいなら…恋次、お前が一護をモノにしろ」


「はぁ?何で俺が…」


「お前が一護と付き合えば、自然と私も一護の側にいることができるからな。
それに、私は、お前たちがお似合いだと思うぞ?」


「余計なお世話だ。
だいたい、お前が一護と付き合えば…」


「いや、一護には女よりも男が似合う」


ルキアは腕組みをしてきっぱりと言う。
影でこんなことを言われているなんて、可哀想な奴だな、と恋次は少しだけ一護に同情する。



そしてルキアがちらりと甘味処の外を見ると、
見慣れた橙色の頭を見つけた。



「話をすれば何とやら、だな。ほら、恋次!さっそく行ってくるが良い」


ルキアはぼっと立っていた恋次を思い切り蹴り飛ばすと、
しっしと手を振って一護のところへ向かわせる。

恋次は不服そうな顔をしていたが、
別に話かけるくらいなら問題ないか、と諦めて一護の元へ向かった。





甘味処に残ったままのルキアに、
後ろからグラマラスな女性が話しかける。


「アンタさぁ…」


「聞いてたんですか、松本副隊長…」


「何かいろいろ言ってたけど、
…ただ単に恋次と一護をつき合わせたいだけなんじゃないの?」


「その通りです」


悪びれもなく、ルキアは澄ました顔のままで言い放つ。



「フフッ…まぁ、面白いからいいけど」



悪女が二人、
気味の悪い笑顔を並べて恋次の背中を見守っていた。
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