-海の図書館-

□始動
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「クロエ言ったよな。確信が持てたら話す、て」
「い、いや、まだ確信が持てたわけじゃ…」
「でも、ガドリアに帰ると行動を起こす程のことなんですよね」
ぐ、と言葉に詰まる。
心なしか2人の言い方が冷たい。
当然だろう。勝手に黙って帰ろうとしたのだから。
自分が彼らの立場だったら多分、というか絶対怒る。

「クー。心配なのはわかるけどあたし達そんなやわじゃないよ。いざとなったらガドリア軍だろうがクルザント王だろうがぶっ潰しちゃうし!」
それはまずいだろう、とツッコもうとしたが止めた。
ノーマだけでなく、セネルやジェイまで目がマジだ。
「あんまり1人で溜め込むなよ。逆にこっちが心配する」
「もう少し僕らにも頼ってください。その方が安心ですから」
「……すまない…」

俯いて謝るクロエの肩にノーマが手を乗せる。
クーゥ、そこは謝るとこじゃないっしょ?
クロエは軽く目を見開いた。
「……そうだな」
一瞬だけ瞳を閉じて、それから仲間達の方を向く。

「ありがとう、皆」
その言葉に、ノーマは満足げにうんうん、と頷く。
一方セネルは彼女とは逆にむすっとした表情で話す。
「そもそもクロエの考えは俺達の気持ちを考慮してないだろ」
「まぁまぁ、セネセネ拗ねない拗ねない」
「…拗ねてない」

(その言動が明らかに拗ねてるって)
ノーマは意地の悪い笑みを浮かべる。
ウィルとジェイは肩を竦め、クロエは「何でクーリッジが拗ねるんだ?」と首を傾げる始末。

ともかく、とセネルは自分から話題を逸らす。
「そうと決まったら善は急げ、じゃないか?」
「そうですね。明日辺りにでも出発しましょうか」
「え?でもリっちゃん達には言わなくていいの?」
「それはウィルさんに任せましょう」
「何故俺なんだ」
「この街の保安官が今日明日でここを離れられるわけないでしょうから」
にこやかに答えるジェイに保安官は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「……まあいい。俺が他の者達に伝えておこう」
「さぁっすがウィルっち♪伊達にあたしらのオヤジやってなぃだぅっ!!」
「誰がオヤジだ」
お決まりの鉄拳がノーマに振り下ろされる。

―――この光景が少しの間見れなくなるのか。
ノーマとジェイはそう思わないかもしれないが、セネルとクロエは何となく寂しいなぁと感じていた。

















「………?」
ふと、クロエは思った。
今まで気が付かなかったが、結構かなり非常にとても大事な問題を。

「……なぁ」
彼女が呼びかけ、4人がこちらを向く。
「ノーマはともかく、クーリッジとジェイは出身地からして色々とまずいんじゃないか?」







―――かたや、現在ガドリアと交戦中の敵国出身。








―――かたや、出生地不明の元忍者の少年。








「「「あ………」」」












どうやら出発はもう少し先になりそうだ。









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