-海の図書館-

□始動
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―――――――――――


建物はかなり昔の物らしく、所々に柱や壁であっただろう残骸が転がっていた。
2人は持っていたランプに灯を付け、中を探索する。

「へへ、やっとお宝にありつけそうだな」
ニヤニヤと笑いながら丸まるとした顔を撫でる。
「油断するなよ。何が起こるかわからないからな」
当たりに罠が無いか慎重に調べながら男はそう返す。
わかってるって、とそれに返答したきり彼らは無言で奥へと進んだ。


























暫く歩くと、急に辺りが明るくなった。
「!………随分開けた場所にでたな」
細い腕を上に翳しながら眼が慣れるのを待つ。
それから腕を下ろすと天井無い大広間のような場所が目に映った。
そしてちょうど彼らの真正面の延長線上に奥へと続く道がひとつだけ存在していた。

「おっさん達、何しにきたの?」

「「!!?」」
突然かけられた女の声に、2人は身構えて辺りを見回す。

すると、上から少女――見た目からして16、7歳だろうか――が降ってきた。

「こんな辺境に来る奴と言ったら財宝目当ての奴らしか居ない。お前もその口だろう」
ナイフを構えながら少女を睨みつける。
しかし彼女は堪えた様子もなくニッコリと笑った。

「あたしは違うよ。だからおっさん達と同類じゃないし邪魔もしない。喧嘩は好きじゃないし」
それを聞いていたふくよかな方の男はニヤリと笑った。
「へっへ、聞き分けの良いお嬢ちゃんじゃねぇか。なら遠慮なく通してもらうぜ」
「どうぞ?お好きなように」
そう言って潔く道を開けた。
細身の男はまだ警戒心を解いてなかったが、相方が進んで行くのを見て少女に背を向けた。
「……………」
少女は2人が消えた道を見つめて、一瞬痛々しい表情をしたが、すぐに表情を消して遺跡を出た。

































――――そして、彼女の後ろからは、耳をつんざく様な男の絶叫が、森中に響き渡ったのだった。











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