-海の図書館-

□〜平和な時間(とき)〜
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―――――、―――――………

…?何言ってんだ…?
こんな声、聞いたこと無い…。

――――、―――……!

何かを訴えてる…?
誰なんだ、お前は……


―――っ…!――お………!

あれ…?
今度はやけに聞き覚えがある…

――……ぉき…!ク………!

怒ってるような…。
でも…ずっと聞いていたくなる……

――ぉい…!クー…ジ、……きろ…!


ああ、そうだ……この声は…





「いい加減にっ…!起きろーー!!!」
「っ!うわぁぁあ!!?」

突然耳元で大声がしてセネル跳び起きた。

「やっと起きたか?」
目を白黒させながら声のした方に視線を向けると呆れた口調で黒髪の少女が言ってきた。

(…夢じゃなかったのか。)
どこまでが…?と思ったが、すぐにその疑問は吹っ飛んだ。
もっと重大なことに気付いたから。

「!!そうだっ訓練!悪い!クロエ、俺寝坊…!」

身体が訛るといけないから、定期的に訓練は続けないか?

数ヶ月前に、自分からそう言った。
世界を救うという(実際はそんなたいそれたことなんて考えてなかったが)目的があったからこそ必然的に一緒にいることが多かったが、この戦いが終わったら今みたいに頻繁に会うことは叶わない。
そう思うとどうしようもない虚無感が胸の内に広がり、気付いたら強くないたいということを理由にクロエに話しかけていた。
少しでも彼女との繋がりを持っていたかったから……


…それなのに、
(最悪だ……!)
いつもは低血圧のセネルを配慮してお昼過ぎからやっているのだが、今日は自分の都合で時間を早めて貰ったのだ。
それを自ら破ってしまい、今更ながらにこの体質を呪った。


あからさまに慌てていると、隣から忍び笑いが聞こえてきた。
「ふふ…っ、安心しろ。寝坊じゃないから」
ほら、と指差した方向を見やると、8時30分を示した時計があった。
「どうせお前のことだから起きられないと思ってな。用事に遅れられても困るし、早めに起こしに来たんだ」
ア然とするセネルにクロエは可笑しそうにそう言った。

「、良かったぁ……」
弱々しく呟くと、クロエはまたクスクスと笑い出す。
それを見て内心ドキリとするが、顔には出さずにしかめ面をした。
「そんなに笑うことないだろ」
「すまない。まさかそんなに慌てるとは思わなかったから…」

当たり前だろ…。お前には絶対に嫌われたくないんだから…。

それを素直に口に出したらこの少女はどんな反応をするのだろうか。
まぁ、そんな勇気が自分にあるはずないが…

「じゃあ、そろそろ行くか」
セネルが武器や装備品などを確認しながら尋ねた。
「ああ…と、ちょっと待てクーリッジ。お前まだ朝食を食べてないだろう?」
「そうだけど…別に必要ない。いつも食べてないし」
そう言うと、クロエは眉尻を吊り上げて反論した。
「ダメだ。いつもは昼過ぎまで寝ているからだろう。何か作ってやるから、こんな時くらいしっかり食べろ」
食材、勝手に使うぞ、と自分に一応断ってからキッチンへ向かう彼女を見ながら、思ってもみなかった展開にセネルはたまには朝から訓練するのも悪くないかも、と思っていた。


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