-海の図書館-

□〜平和な時間(とき)〜
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―――――、――――――……………


…何か、聞こえる……。
何と言っているのだろう…上手く、聞き取れない………。
これは…誰……?







「――――………。」
小鳥のさえずりと涼しげな風により、クロエはゆるゆると覚醒した。
…開けたまま寝てしまったのか、と窓辺の方を見やってひとりごちた。

「…夢……?」
確認するようにそう呟く。
当たり前だ、今ベットの中に居るのだから。

…でも、
「やけに鮮明だった…?」
"声"ではなく、自分の"思考"が。
夢というものは、恐怖からは恐れ、幸福からは喜びといった直情的な感情が現実の状況の良し悪しに関わらず浮かんでくる。
それなのに今の夢で最初に浮かんだのは疑問。
どんなに非現実的なことでもそれが成り立ってしまう世界にそのようなことを抱いたのは初めてだった。

「…考えていても仕方がないか。」
ただの夢にこんなに思い悩むのも馬鹿馬鹿しい。

頭を切り替えて今日の予定を思い出す。
朝ご飯を作って…、そうだ、今日は天気がいいから布団を干そう。
それから…
「クーリッジと訓練する約束だったな…。」
ベットから起き上がり、窓辺に立って大きく伸びをする。
早朝の涼しい空気、木々の擦れる音や優しい陽射しに思わず目を細める。
「ん…いい朝だ」
そう言った顔は、見かけた者が居たのならば見惚れてしまうくらい美しかった。



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