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□これもまた、ひとつの始まり
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「・・・・・重い」

眠っていたはずの俺は、その重みで目が覚めた。何かが、俺の上に乗っかって、しがみ付いているのだ。
落としてもよかったのだが、こんなことしそうな奴は1人しか思いつかねぇ。
仕方なし、何かを支えながら上半身を起こせば、そこにはやっぱり気持ちよさそうに眠るイオンの姿。
しかも、擦り寄るように眠っているので、引き剥がせば確実に起きるだろう。
時計を見ると、小さな子供が起きるには少し早い時間。・・・・・一体、俺にどうしろと。

しっかし、何でこんな無理な体勢で寝てたんだろうな、俺。右隣を見れば、いつものようにアリエッタが寝息をたてている。
イオンは俺の上だ。いつもなら、ここまでなのだが。左側にも何かいるような。その隣に何気に視線を向けて。
・・・・・ああ、そう言えば昨日はコイツも連れてきたんだったか。そう、いつもはいないもう1人。
眠ってるくせに、どこか顔を顰めたような、コイツは。・・・・・この世界の、俺の被験者だった。

―――――――――

「お前、そこで何をやっている」

仕事を終えて、俺はイオンとアリエッタが待つ自室に戻る途中、そこに蹲る小さな影を見つけた。
年の頃は、今年8つになるイオンよりほんの1つか2つ、上と言ったところか。
だが、夜も更け掛けているこんな時間に、そんな歳のガキがうろつくはずもない。ただでさえ広い、教会と神託の盾騎士本部だ。
時間が更ければ人などほとんどいないのだから。大概は親が、そうでなければ教団員が、今頃部屋で眠りにつかせているはずだ。
自然、俺の声が訝しげになっても、仕方がないと思う。
その俺の声に、のろのろと顔を上げたソイツは、・・・・・思いっきり見たことのある顔だった。
年齢故の差はあれども、主に毎朝鏡の前で。



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