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□陽だまりの時間
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「景色のいいところ、ご存知じゃありませんか、ユラ?」
「また随分唐突だな、イオン」
またしても、導師権限で呼び出された俺は、目の前の彼が尋ねるのに。
思わずそう返してしまったが。
「そうですか?あなたもご存知の通り、最近どこぞの糸目ビア樽無能大詠師の所為で、缶詰だったんですよ。
・・・・・晴れてこうして解放されたので、癒しを求めて出かけたいなぁって」
「癒し、ねぇ」
だから、ようやく10歳を越えた奴の台詞じゃねぇって、それ。
「参考までにアリエッタに聞いたら、自然が一番じゃないかと。ね、アリエッタ」
「はい、です。イオン様、最近お疲れ、です。だから、空気のいいところ、連れて行って、あげたい、です」
にっこり、とアリエッタが笑うのに、つられて俺も笑っていると。
「だが、イオン。最高権力者のお前が、ほいほい身軽に出かけるのは・・・・・」
「や、ですねアッシュ。何の為にあなた方を呼んだと思ってるんですか?
当然お付き合い頂くに決まっているではありませんか」
近頃、その黒さにますます磨きが掛かっているイオンは、どこぞの死霊使いを彷彿とさせて。
その癒しの笑顔とは対照的なそれに、もはや向かうところ敵なし、だよな。
軽くアッシュの発言を流して、イオンは続けた。