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□騒乱は来訪者とともに
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それはまるで、季節外れの嵐のようだったと、後に誰かは語る。



ダアトの宿に落ち着き、これから皆で食事を、と言う時にそれは起こった。

バタンッ

突然大きな音で扉が開いたかと思うと、緑色の塊が飛び込んできた。

「シンク?!」

飛び込んできた相手を全員が認識した瞬間、それぞれの獲物に手を掛ける。
狙われているだろうイオンを、アニスが背後に庇う。

「こんな時間に、こんな場所で戦いを挑んでくるとは。
よほど、六神将は常識というものがないんでしょうかねぇ」

いつものように笑みを浮かべて、ジェイドは相手を見やる。
が、違和感を感じた。
シンクが視線を向けているのは、狙っているだろうイオンではなく。
少し離れたところで剣に手をやっているルークなのだから。
じっとただ、只管にルークを見つめるその姿は、ある意味異様で。
向けられたルークは、

(俺、何かしたっけ?いや、敵なんだからしたも何もないけどよ)

などと考えつつも、視線が外せず。
周りの人間も、まさかこんなところで譜術を放つだとか、武器を振り翳すなどできるはずもなく。
しばらく膠着状態が続き。

「別に僕は戦いに来たわけじゃないよ」

ようやく口を開いたかと思えば、出てきた台詞は軽く予想の範疇を超えていた。




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