追憶と未来のカノン

□追憶と未来のカノン 6話
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「よし、今日はここまでだ。・・・・・上達したな、ルーク」

「へへっ、師匠ありがと!」

剣術の稽古の後、そう言って頭を撫でてくれた師匠に、俺は複雑な気分になる。
戻って繰り返している俺の実力は、あの時と何ら変わりはなくて。
けれど、それを悟られてはいけないから、必死に力を隠している。
おそらく、その合間に積んでいる譜術の実力も、それなりにはついている、はずだ。
“以前”の俺には使えなかったものだけど、被験者のアッシュができるんだ。
俺にもできるはずだ、と練習してはいるが、使った事がないのでその実力の程は分からない。
これにはイルも協力してくれて、更に彼は導師として世界を巡っていた為に情勢にもあかるい。
地殻にいるローレライとはまた違った視点で、世界の情勢を教えてくれる。
・・・・・その教え方は、結構なスパルタだったけれど。

俺が必死になって力を付けようとしている事を、イルは疑問に思っても口にしないでいてくれる。
それが、今の俺には非常にありがたかった。それに、イルの前では自分を偽らずに済む。
“以前”の俺を知らないイルの前では、演じる必要がないからだ。

その何もかもが、この目の前の存在を越え、もう一度失った時間をやり直すためだと言うのが。
・・・・・未だ話せずにいるけれど。



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