短編
□新しい決意
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「まだ、見つからない……──今年も駄目だったな」
今年も、去年も一昨年も。もしかしたら……来年も、その次の年も……。
俺の目的は達成できない。
「ははっ、まさか一生……」
そんな縁起でもない。
だけど見つかるなんて確証があるわけじゃないんだ。
──賢者の石。夢物語のようなそれに縋らなければいけないなんて、なんて惨めなことか。
「君ならきっと見つけられるよ」
「そりゃ……手に入れるさ。絶対。でも時々不安になる。俺たちのしてることは意味のある事なのかなって」
いつものように笑おうとしても、不自然になるだけだった。
それは自信が無いから。強がってばかりでなにが手に入るというのだろうか。先の見えない不確かなものなら、なおさらだ。それは未来という、読んで字の如く未知なもので、何が待ってるか全然わからない。
「さあね」
「……きっぱり云うなよ」
アンタはそういうやつだって思ってたよ。俺を甘やかさないところはいいけどさ。
やっぱりそうだよなぁ。でも人に……大佐に云われるとやっぱ辛いかも。
あと、10分。
「そんな不確かなもの、確証を持ってあると云ってやれない。鋼のが求める物はそれほど幻に近いものだから。でも私はそれを信じないが、君を信じてるから」
「そ、そんな……っは、俺なんかその辺の変な宗教より不確かだ」
本当にその言葉に偽りがないとでもいうような優しげな表情で云うもんだから、俺はどうすればいいんだと慌てる。
「生憎私は無教徒でね。豆教なんてどうだ」
「〜〜っ!喧嘩売ってんのかてめぇ……」
いいこと云ったかと思ったらすぐこれだ。
お前こそペテン師だ。さっきの笑顔は詐欺だろ。
「大丈夫さ、来年は二人とも無事に元の身体を取り戻してめでたしめでたし」
「なんか軽くね?」
さっきまで暗い雰囲気だったのに、大佐の云い方がさも簡単だとでもいうようだったから、なんかそんな気がしてきて気持ちが軽くなってきた。
苦笑いを見せてやれば大佐は不敵な笑みを向けてきた。
あと、5分。
「めでたしの後は結婚でもするか、鋼の」
「誰と?」
結婚でも何でも勝手にすれば。
なんて、少し胸が痛かったり。
「私と鋼の」
「……ばかじゃねーの」
俺とかよ。
あと、3分。
「式は小さな教会で、神に誓いを立てるのではなくお互いに。アルフォンスや君の幼なじみ、私の数人の部下たちを呼んで祝ってもらおう」
「どっちが新婦?」
「私が嫁に行くのか?それもいいかもしれんな」
想像したくねーよ大佐のウェディングドレス姿。
俺はこんな嫁欲しくない。
1分。
「皆に祝福されて君は次期大総統夫人になる」
「結局俺が嫁さんかよ。へぇ、アンタ大総統になれんの?」
「もちろんだ。毎日疲れて帰ってくる私を笑顔で君が温かい料理と一緒に待っていてくれる」
「いつまで続くの、大佐の未来物語」
「おかえりって云う君を抱き寄せて優しくキスをする。ずっと君は笑ってるんだ」
「そうだったら幸せだな」
大佐があんまりにも嬉しそうに自信満々に云うからその笑顔が移ったように俺も口元が緩んできた。
30秒。
「幸せにするさ、必ず」
「ホント?俺、大佐の足枷にしかならないよ」
「私は君がいるだけで幸せだ」
5、
「君は?」
4、
「……そうだなぁ、大佐と一緒にいると俺は安心するし、」
3、
「俺の中の大佐は大き過ぎる存在で」
2、
「だからそれって幸せってコトなんだと思う。大佐、」
「ん?」
1、
「大好きだよ」
0。
遠くから歓声や鐘が鳴る。
新しい年が明けた。
「……んっ……」
お互い見つめ合って、俺が目を閉じると大佐が近づいてくる気配がした。
ゆっくりと相手の存在を確かめるような触れるだけのキスをした。
「今年こそ取り戻すよ。で、アンタの嫁にでもなんでもなってやるよ」
「それは楽しみだ。私は君の為に昇格してみせるさ」
「云ったな」
「そっちこそ」
今度はさっきとは違う、誓うような深い口付けを交わす。
新年早々こんなことしてていいのかな、ってちょっと思うけど今くらいいいか、なんて。大佐に大分毒されちゃったようだ。
今はまだ夢物語のようなたわいのない未来予想だけど
確証があるみたいにそれは実現する気がする
願わくば、今年こそ
大佐と一緒にいられますよーに。
アトガキ。
乙女豆っ子炸裂(笑)
年越し話でした。
なんだかだんだん小説の書き方が変わってますよね鈴流。どうも豆の一人称だと乙女になる気が…。
さり気にプロポーズしてましたね増田ったら。ってか増田さんウェディングドレス着たいのかな?……ちょっと似合いそうかも(ぇ)いやいやいや、私ロイ受け主義じゃないです!ロイエド至上主義でございます!!
ってかいつになく甘い話だったなぁ……。
20080923修正