長編

□家族とそれと
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※ロイ+兄弟
現代パラレル設定(?)
ロイエドになる予定





「ロイ兄遊ぼ!」
「ロイ兄、あのね俺、ずーっとロイ兄と一緒に居るんだ!」
「大好きだよ、ロイ兄!!」

可愛くて愛しい子供。なによりも大切にしたいと心から思った。
子供だから可愛いのではなく、彼だから愛しいのだ、







「おいこら起きろおっさん。涎垂れてんぞキモイ」
「え、エドワード……」

と、思っていたし思っているのだが、最近少し自信が無くなってきた。ほんの数年前まであんなに愛くるしくまさに天使と呼ぶに相応しい子供だったのが、今ではこれだ。口を開けば罵詈雑言。何処で育て方を間違ったのか。甘やかしたのがいけなかったか。大切にはしてきたが甘やかしたつもりはなかったのに。ああ天使は何処に。

「寝呆けてんじゃねーよ、さっさと起きて顔洗え、飯だ」

それだけ言うと長い金髪を翻して行ってしまった。
子供の成長って早いな、と思ったところで彼の言ったようにやはりおっさんなのかと少し落胆した。

「おはよう、ロイ兄」

いた、天使いた。エプロンを付けてふわりと笑うアルフォンスを見たら自然と笑みが浮かんだ。やっぱり育て方間違ってなかったかもしれない。
食事を主に担当している彼の作る料理は文句無しだ。

「にやけてんじゃねーよ」

弟は天使なのに、なんでこの子はこうも口が悪いのか。切ない気持ちになりつつも食卓に三人でついた。朝晩は揃って食事を取ると約束しているから私が起きるのが遅くて彼は空腹で機嫌が悪いのかもしれない。
食べたら機嫌治るかと思ったがアルフォンスが悪戯で牛乳を出したせいでまた不機嫌になった。年頃なのだろうか。最近よく聞くキレやすい子供?





そんな悩みを抱えながら今日も仕事だ。専らの悩みの種はエドワードである。

「お疲れですか」

ピンポイントの問い掛けに思わず口元が引きつる。顔に出ていたのだろうか、社内でも有数の美人秘書に言われてしまった。なんとも言えずに苦笑いで返す。

「いや、平気だ」
「またお子さんのことで悩んでいるんですか。もうエド君も中学生、今年は受験ですし、難しい年頃だから仕方ありませんよ」

ばっちり見抜かれているらしい。私に養子がいるということは社内でもごく僅かしか知らないことだ。中でもホークアイ秘書は育児に行き詰まった時に女性からの視点で助言をくれた。結婚もしてないのに二児の養父になってからはわからないことだらけで彼女の存在は有り難かった。だから今エドのことで悩んでいるのもお見通しなのだろう。

「高校生、そうかエドもそんな歳か。早いなあ」
「一気に老け込んだ気がしますよ社長」

……また言われた。
そうか、思春期女子によくあるお父さんこっちこないでキモイ!みたいな、ってエドは女の子じゃないだろ。そもそも、私はまだ二十代だ。かろうじてではあるが、おっさん呼ばわりされるのはどうなんだ。いや、十代の子供にしてみればおじさん、なのか、まさかそんな。エドはそういう目で私のことを見てるからもうロイ兄と呼んでくれないのだろうか。アルも実は渋々……。
ああ、一気に悲しくなってきた。

「社長、会議の時間です」
「ああ」

あー、仕事したくない。邪念を抱いていると秘書に睨まれた。彼女の察しの良さは時に困ることもある。
時々投げ出してしまいたくなる。今抱えている多くの社員を見放す気はない、しかしながらたまには逃避してみたくなるのが人情だ。仕事をしたくないのには理由がある、なんて正当化できる理由を探しながら今日も職務をまっとうする。そうでなければやってられない。

働かなければならない、大人だから。
そんなこと小さな子供でも知っている。




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