猿に首輪(仮)

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パパラチアはまぁまぁのくじ運だった。
サバイバルゲームはトーナメント制なのだが、クラスはAからJの十クラス。
そうなると試合数にばらつきが生じてしまう。
優勝するためには少しでも温存したいので試合数が少ないところに入りたい。最悪なのは優勝するには三試合こなさなければならない四枠に入ること。
十分の四をパパラチアは見事に避けてくれた。しかし―――1Aはトーナメント表で言うならば一番左端。第一試合になってしまったのである。他のクラスの試合を見て対策を練りたいところだが、先に自分たちがのぞき見されてしまうことになってしまった。そこがまぁまぁのくじ運と言うわけだ。
相手の1Iは現在五位。“二ツ星”以上も六人と、はっきり言って格下だ。だが奴らはホッケーは三位とチームワークが良い。
ワンマンプレーが好みのルビィとの違いがどう出るか。
調べた資料を眺めながら試合会場へ向かう。
第一試合の会場は学園都市南方の丘陵地帯だ。
試合ごとに場所が変わるので毎回対策を練らなければならないが、丘陵地帯なら問題は少なさそうだ。
どんな感じなのかは見てみないと分からないが、まず、見晴らしが良い。隠れる場所が少ないし、高低差が緩やかだが存在する。
コソコソと隠れて戦うタイプには不向きな場所だ。キングを護りながらだと尚更だが―――ここは何よりも広い。見つかったからと言って射程圏内に入ると言うほどではないのだ。
「ねぇパパラチア」
「何です?」
同じサバイバル出場のパパラチアに声をかける。
「1Iって、個々は弱いんでしょ?チームワークが良いから、各々の能力が何乗にもされてるって感じよね?」
「そうですね。言われてみるとそんな感じですわ」
「良かった」
「何がです?」
「じゃあ、二回戦に戦うとなるのは1Eと1G、どっちだと思う?」
「一回戦もまだ始まっていないと言うのに、何を言ってるのですか?」
「先読みよ。それに、1Iには余裕で勝てるから」
ろくに感情のこもっていない、淡々とした声で宣言するルビィにパパラチアは「呆れた」と言って大きくため息を吐いたがそれ以上この件に関しては何も言ってこなかった。パパラチアもルビィの性格をだいぶ理解してきたのだ。
「わたくしの予想は、1Eですわ」
「何で?」
「“二ツ星”以上は1Eが六人、1Gが五人ですわ」
「それだけ?ホッケーじゃ1Gの方が成績良いけど?」
「1Eの方は頭脳派ですわ。わたくしたち同様にしっかり対策を練っていると思うんです」
「そっか。じゃあ最初の試合も見られて、それを対策される可能性は高すぎるか」
「それはどのクラスもしてくると思いますけど」
「じゃあ三回戦、いわゆる決勝だけど、別ブロックからどこが勝ち上がってくると思う?」
「1Jも捨てがたいですが、やはり暫定一位の1Cでしょう」
「現在一年で唯一の“四ツ星”がいるから?」
「……」
ルビィの問いにはパパラチアは口を閉ざした。それが肯定だと言っている。
そう。
現在一年で最高位の星はルビィやパパラチアの“三ツ星”ではない。
その上の“四ツ星”が一人だけ存在する。
そいつが1Cで中心になってまとめ上げている。
チームの牽引力もすごいのだが、個人の能力も目を見張るものがある。
そいつはアーチェリーにも参加していたのだが、ぶっちぎりでトップで優勝していたのだ。
魔術抜き、お世辞抜きでも、確かにあの実力はルビィも納得のレベルだ。
別ブロックだったから良かったものの、同じブロックでなくて本当に良かった。
少しでも相手が消耗してから戦える三回戦だからこそだ。

スピネル・スピンタリス。

要注意人物であることに間違いはない。


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