猿に首輪(仮)

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 5-3

―――クラスマッチ十日前。
ホームルームにで。
「さて、もう目前に迫るクラスマッチですが、誰がどの競技に出るか決めようと思います」
黒板の前に立って話すのはパパラチアだった。ルビィは知らなかったが、パパラチアは学級委員も務めていたのだ。
「さて、皆さん。プリントは行き渡りましたね?今回の競技とルールです」
そう言いながら、パパラチアは黒板に競技の名前を書いていく。

・魔術パフォーマンス 二名
・魔術論文 二名
・マジックホッケー 六名
・フェンシング 三名
・アーチェリー 三名
・サバイバルゲーム 十名

「今年はこのようになっていますわ。なお、それぞれ二十名に対して二十六名分の枠があるので、うち六名は重複することになります。補欠も含めておく予定ですが、一人登録は二つまで。掛け持ち三つはいけません」
そう言ってからパパラチアは持っていた紙を一枚めくる。
「サバイバルゲーム以外は去年と同じルールですが、最後のサバイバルはルールが去年とは違います。まず―――」

・勝ち残りトーナメント制。最後まで勝ち残ったクラスが優勝。
・制限時間は二時間。
・あらかじめキングを決め、キングを倒せば勝ち。
・キングは敵を攻撃してはいけない。もしキングが敵を倒してしまった場合は反則負け。
・もし時間が来てもどちらもキングを倒せなかった場合は残っている選手の数で勝敗を決める。仮に同数だった場合、残った選手の“星”の合計が少ない方を勝者とする。
・相手を怪我させるような行為は反則で即失格。

「となってます。質問は?」
「はーい!その、倒すって明確な基準は?気絶させるとか?」
「いいえ。当日支給されるそうですが、魔力蓄積装置を付けまして、一定のダメージを受けると倒されたとなります。まぁ、簡単な魔術数発でアウトとお聞きしましたわ。それと、ルール違反が無いようにと、選手一人一人に監視用ドローンが付きます。これを破壊しても失格になりますし、このドローンが撮影する映像は、来場者も見ることになりますので、恥ずかしい行為は行わないでください」
「……」
ルビィは配られたプリントを見ながら考えた。
どうすれば総合優勝イコール大量にポイントを稼げるだろうか、と。
「とりあえず、全員参加なのでどの競技が良いか、前日に書いてもらったアンケートの集計の発表をします。とりあえず定員よりも多い競技は要相談ですが―――」
とりあえずルビィは第三希望まで全部書いたが、正直大量得点を得られるサバイバル以外は眼中にない。補欠程度ならなっても良いが、正直よそ見はしたくないのだ。
(にしても、キングは攻撃出来ないのか……。単純に“星”が多い人がなれば良いって訳じゃないか)
自衛のための魔術は良いが、それで相手を倒してしまったら問答無用で反則負けは痛い。
それは今年は“二ツ星”以上が多いのが原因か?
(そうなると守備系の魔術が得意な人がキングになるべきよね〜。シールドを張れるとか、回避行動が上手な人とか、または魔術探知が得意な人……)
そうなると誰が良いのだろう?
クラスマッチに向けてクラス全員の魔術の技術や得意なものはおおよそ把握している。
(とりあえず“二ツ星”は全員投入するとして、そうすると七人。あと三人をどうするかだな〜)
他のクラスにもそれくらい“二ツ星”や“三ツ星”はいるのだ。
だが、情報は足りない。
何が得意で、どのような戦術を仕向けてくるか、などだが、それはこれから収集するしかないだろう。
軍隊ではないのだ。あと十日やそこらで作戦を立ててくるのだろうか?
とりあえず“三ツ星”や“四ツ星”の連中は調べていた方がいいに越したことは無い。
「となりましたが―――よろしいですね!ルビィさん!」
「ふぇ!?」
「ほら、ちっとも聞いていない!」
いきなりパパラチアに声をかけられてルビィは素っ頓狂な声を上げてしまった。
見れば、黒板には既に全員の名前が記されていた。
ルビィの名前は当然―――サバイバル。
「よろしいですね?」
パパラチアの静かだが怒りを込めた声に、思わず背筋に寒気が走る。
「はい」
素直に頷いておく。
それからよくよく黒板を見渡せば―――マジックホッケーにも補欠登録されていたのだった。


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