猿に首輪(仮)

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「お前また門限ギリギリかよ」
「うっさいわね」
リビングに入ると、いつもの位置にブラッドが座っていた。
手には最新の映画雑誌。
他にもテーブルには最新号の漫画雑誌だったり音楽、車、ファッション誌、グルメ、魔術書、ハードカバーなどと統一性が全くない。
「好きでここに来てるんじゃないんだから、素直に戻ってくるだけ良いでしょ?」
「そうだよなー。お前、一昨日までは逃走してたよな。捕まえるの面倒だったな」
「楽しんでたくせに」
「鬼が逃げてるヤツを追いつめるってのは楽しいよな」
「けっ」
ふつう、鬼ごっこで遊ぶ時は逃げる側の方が良いに決まってる。
なんたっていつ捕まるか分からないあのスリルが良いのだ。
鬼は体力はいつでも回復出来るしつまらない。
しかし、この悪魔は鬼が好みみたいだ。
まぁ悪魔と鬼は相性が良さそうだが。
ブラッドは読み終わったのか、それともルビィが帰ってきたからか読んでいた雑誌をテーブルの雑誌の山の上に無造作に置いた。
「つまんねーの」
そう一言添えて。
「……そもそも、ブラッドって映画とか見るっけ?」
「暇だったら見る」
「そんなレベルか」
ルビィは疲れたし、用意された自分の部屋にも行きたくないので半ば指定席となった席に座る。
ブラッドとは反対側だ。
試しにルビィもテーブルの雑誌の山から適当に一冊取ってみた。
これはファッション誌だ。
正直メンズモノなのでルビィには全く縁が無いのだが。
「てか何この雑誌の山?アンタの好みっぽく思えないんだけど?」
今手に取ったファッション誌なんか正直チャラい――ナンパなストリートカジュアル系だ。
ブラッドとは関係なさそうなのだが。
「暇つぶしで適当にまとめ買いさせてきた」
「わぁー」
さすが貴族のぼんぼんだ。
「だがちっともおもしろくねぇ」
「そりゃそうでしょ?コレとかアンタ好みじゃないし」
「まぁな」
そう言うブラッドはソファーの肘掛けに肘を置き、体重をかけ、身体が斜めになる。そのままの態勢で妙に遠い目をしたと思ったら。
「―――遊べるペットがどっかに行ってつまんなかったからな」
「〜〜〜ッ」
その一言で、ルビィの身体に一気に鳥肌が立った。
具体的に言わなくても分かる、この発言の意味が。
「こ、怖いこと言わないでよ!?」
「どこが?」
「アンタの『遊ぶ』って言葉は怖いの!?命の危険を感じるんだから!」
「そうか?」
「すっとぼけるな!?アンタのせいで何度酷い目に遭ったと思ってんの!?」
正確には、これからも遭うのだろうが。
「おいおい、俺はコレでも手加減してんだぞ?『遊び』、なんだから」
「ひぃーーー?」
なら本気を出したらどうなると言うのだ。
やっぱりこれ以上コイツの玩具になるのはこりごりだ。
寒気で震える身体を抱きしめていると。
「ルビィ様、お食事が出来ましたよ?」
「―――ッ!?」
ソファーを挟んで、後ろからコーラルが抱きついてきて。
ルビィの髪の毛が逆立つのを感じた。
そしてブラッドは、ルビィで遊ぶのがここ最近では一番の暇つぶしだと言うのを再認識したのだった。



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