猿に首輪(仮)

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「―――ただいま」
人に見られないようにルートを選びながら遠回りしながら帰ったので、今日も門限ギリギリの時間だ。
『ただいま』なんて、ホントは言いたくないのに。
「おかえりなさいませルビィ様」
そしていつものごとくコーラルがルビィを出迎える。
ブラッド曰く、ルビィがここに来るようになってからコーラルはとても生き生きしているそうだ。
ルビィにとってはブラッドに次ぐ天敵が出現したようなものなのでストレスはマッハで溜まっていくのだが。
このままだと胃に穴が開くのも近い将来かもしれない。
「本日のメニューはフィレ肉のステーキに―――あら?」
靴を脱いでいるルビィに今夜の夕食のメニューを伝えている途中、ルビィの左手の変化に気付いた。
「ルビィ様、もう“二ツ星”になられたのですね」
「……まぁ」
気付くのが早い。
観察眼がすごいのか、ルビィのような守備範囲のみに発揮されるのかは分からないが。
今朝までは一つしか石が無かったバングルに新たに一つ石が増えた。
コーラルは手をパンと合わせ、にっこりとほほ笑んだ。
「おめでとうございます。一週間で“二ツ星”に昇格なされるなんて、本当にルビィ様は優秀なんですね」
「……」
「なら今夜はお祝いですね。ルビィ様の好きなデザートはなんですか?すぐにお作りします」
「え、いや、甘いの苦手だし、さっきカフェで一服してきたから、いらないですよ」
「え」
「え?」
コーラルの表情が凍る。
『小さい子=甘いものが大好き』の方程式が出来ているコーラルには今の発言はショックか。
「……そうですか。分かりました」
「コーラルさん?」
「ルビィ様、今日も疲れたでしょう。夕食の準備が出来るまでゆっくり休んでいてください」
「―――」
何だろうこの切り替えは?
なんだか嫌な予感がする。
そうは思ってても、身体は休ませたい。
本当は足を踏み入れるのも嫌なのだが、靴を揃え直してから中に入った。



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