猿に首輪(仮)

□03
2ページ/50ページ


3‐2

最初の頃はインフォが閉まると、元の自分の部屋に何度か帰ろうと試みた。
しかし、首輪をつけているのでルビィがどこに居るのか簡単にバレてしまうので、何度も悪魔やコーラルに連れ戻されてとんでもない目に遭った。
だから最近は大人しくまっすぐ悪魔の部屋に帰っているが、やはり足取りは重いし時間も門限ギリギリだ。
何でこんなにもルビィに干渉してくるのだろうか?
「はぁ……」
クエストインフォからまっすぐには帰らずに、ルビィは小さなカフェの壁際の席に座り、頭を抱えていた。
まだ時間は夕方。
門限まで三時間以上ある。
だからそれまでここで時間を潰そうと考えたのだ。
このカフェは貴族の学園にあっても、比較的安いメニューが豊富なので、ルビィはたまに利用している。
今はブラックコーヒーとチーズスフレを注文し、少しだけ口を付けた。
「はぁ……」
再度ため息。
“二ツ星”昇格のご褒美にと、ちょっとした贅沢でチーズスフレを頼んでみたが、悪魔のこと、新学期が始まることを考えると食が進まない。
悪魔に首輪を付けられたことはまだ一般の生徒や教師、学園関係者にはバレてはいないが、ルビィが演じた大立ち回りと、その後の降格は既に学園中に広まっている。
当日学園に居なくても、とっくに風の噂で知れ渡っているに違いない。
そう考えると、嫌でも他の貴族と会わないといけない新学期は憂鬱だ。
今度はどんな嫌がらせが待っているのだろう?
“六ツ星”の時と違って、“二ツ星”では対応に違いも出る。
調子に乗る奴だって出てくるだろう。
それに悪魔はルビィに真面目な生活しろと言ってきたのだ。言った本人の悪魔が不真面目な生活態度だと言うのに、不公平な話だ。
(そりゃ、“七ツ星”になるためには生活態度を改める必要もあるけどさ……)
一口、チーズスフレを口に放り込む。
結構味が濃いので、すぐにコーヒーを流し込んだ。
何であの悪魔に監視されないといけないのだろう?
アイツが飼い主でルビィが飼い猫。
まったくもって不満だ。
早くこの首輪が外れてほしい。
学園の、悪魔を慕う女生徒に知れ渡る前に、何としてでもこの首輪だけは外さなければ。
今は、“二ツ星”になった喜びよりも、今後のことによる面倒事による不安の方が、ルビィの心を占めていた。
討伐系クエストをしていれば、そんなことを考えることも無かったのに。



_
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ