猿に首輪(仮)

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あと一歩で門をくぐり終える。
その瞬間、背後で嫌な気配を感じてルビィは振り返った。

「―――げ」
「人の顔を見て『げ』とはなんだ『げ』とは?」
「今一番会いたくないヤツに会ったからですよ」

あと一歩。
あと一歩進めばコイツともおさらば出来ると言うのに、突然現れたヤツに襟首を掴まれて前に進むことが出来ない。

「ほぅ、それは心外だな。てめぇはもう少し、貴族で“七ツ星”で、先輩である俺に対して敬意を払えってンだ。生意気な口ばっかり叩きやがって。少しは女らしいカッコでもして大人しくなりやがれ、問題児(トラブルメーカー)が」
「嫌ですよ、ブラッド“先輩”。それに、女らしくしてほしいならまず先輩があたしを女扱いしてくれませんか?」
「山猿にメス扱いは出来ても女扱いは難しいな」
「ですよねー?ならあたしもアンタを先輩扱い出来ませんから」
「―――フンっ」
掴まれた襟首が、そのまま引っ張られ後ろに投げ飛ばされる。
そこは山猿。貴族の娘ならば「きゃあ」とか言って情けなく倒れるものだが、ルビィは簡単に態勢を立て直す。
場所が逆転した。
ルビィに、ブラッドと言う男が門の前で立ちふさがる。

「さてと。俺はポイントなんかどうでもいい。だが、せっかくの面白い玩具をみすみす手放す気はない」
「人をオモチャ扱いって……ホント俺様貴族は嫌だ」

ブラッドは左腕を前に突き出した。
七つの宝石が埋め込まれたバングルが煌めく。

「ありきたりではあるが。ここより先に進みたければ俺を倒すんだな」
「―――」

ブラッドは四大貴族レッドストーン家の、確か三男。現在高等部三学年で、二学年の時に史上最速で“七ツ星”になった戦闘狂。
もしルビィが“七ツ星”になれるのならばその記録を大幅に更新できるのだが。
高等部の在籍する生徒ならば、彼が最強だろう。
そして、ルビィの天敵。
ルビィは乱れた髪を直しながらため息を吐いた。

「最悪」

理事長は、遂に最強の切り札を使ってきたのだ。


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