猿に首輪(仮)

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一つに結いあげた嫌いなストロベリーブロンドをなびかせて、ルビィは走った。
とりあえず理事長室がある建物からは誰とも鉢合わすことなく出ることは出来たが、ここからが本番だ。
流石に教員は参加しないだろうが、生徒はどうなのだろう?
ランクを上げるためにも百ポイントは魅力的だ。
それも生徒を一人理事長のところまで連れてくるだけで貰えるなんて破格だ。
ルビィじゃなくても、ポイントを稼ぎたい人は動く。それに庶民であるルビィに対して良くない感情を抱いている人間はここにはたくさん存在する。そもそも好意を抱いている人など数える程度にしかいないのだ。
そのルビィを痛めつけられるチャンスとなれば、動く。
まぁ大抵はルビィにとって雑魚なので動作も無いが、問題は“七ツ星”が動くこと。
流石に“六ツ星”のルビィではキツイ。一人なら対処出来るかもしれないが、二人以上で動かれたら……。
もうランクが上がることのない最上位だが、理事長から要請があれば動く可能性は高い。
今学園には何人の“七ツ星”が残っていただろうか?
頭の中で誰がいたか思い出す。
夏季休暇中だから全員が揃っているとは思えないが、一番会いたくないヤツは昨日会ったばかりだ。
ヤツなら動くだろう。
だから、追いつかれる前に学園から脱出しなければ。
ルビィは左腕に意識を集中する。

「―――“ジルコン、風を集めて、”」

呼べば、集まる。
理事長の言った通りルビィは魔術の才能はあった。
それも理事長の予想以上に。
ルビィは魔術に愛されていた。
おそらく、一学年では一番の使い手ではないだろうか?
それを素直に認めてくれる者は、同学年では居ないだろうが。
バングルに付けられた藍色の宝石を介して、レビィに風が集まった。
身体が軽くなる。これで早く動ける。
人の気配が近づいてきた。見つかる前に、ルビィは走りだす。


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