猿に首輪(仮)

□03
1ページ/50ページ


 3‐1

「ぃよっしゃぁああああああ!!!」
あの事件から六日後。
明日で夏季休業が終わりと言う日。
ルビィは連日クエストインフォに通い詰めてポイントを溜め、前回よりも大幅に上回るスピードで“二ツ星”に昇格した。
予定よりも一日早い目標達成に、ルビィは嬉しさで震えていた。
「ホントアンタってすごいわね。このスピード、歴代最速よ」
仲のいいインフォの受付のおばさんも、半ば呆れていた。
左の手首に付けたバングルには二つ目の石がついた。
今度は青い石―――すなわち水属性だ。
今回は色々と悩んだ末に水属性にしてみた。
水は色々と応用が利くのだ。水を生み出すだけでなく、氷も応用性が高い。冷やすことも出来る。手に入れてから結構便利な属性と言うことに気付いた。
討伐クエストのことを考えると攻撃力に少し心配はあるが、そこはルビィが培った知識と勘、実力でどうとでもなる。
日常生活で水属性はとても便利なのだ。
二つ目に攻撃力の高い属性を選べば、難易度の増す“三ツ星”クエストに対応出来るだろう。
「やったやった!」
インフォが開いている時間はひたすら討伐クエをこなし、閉まったならば部屋で論文系のクエを進める。
たまに時間がある時は猫探しや拾いもの、図書館の貸し出し図書の回収など、ポイントになるのならなんでもやった。
クエスト三昧の生活の成果が、異例のスピードでの“二ツ星”昇格だ。
嬉しくて興奮しているからなのだろうか?
ちっとも疲れを感じない。
高揚としていて、まだクエストをこなせる気がした。
せっかくだから手に入れた水属性が有効な魔物の討伐クエの一つでもやろうかと思ったら、おばさんにストップがかかった。
「ルビィ、今日はおしまい。明後日からまた学校が始まるんだから、そろそろ身体を休めなさい」
「えー」
「こんな生活に身体が慣れてると、辛いよ?早く普段の生活習慣に戻しなって」
「……」
「学生は勉学が本分。クエストは課外。明日は疲れた身体をゆっくりと休めなさい」
「……はぁーい」
クエストを受けるには、インフォに居る人に申請しなければ受けられない。
そのおばさんに言われていては、受けたくても受けられない。
まぁ目標の、“二ツ星”になれたから良しとしよう。
この時期の一学年で“二ツ星”は十人もいないのだから。
しかし、今のルビィには部屋に帰りたくなかった。
その理由はもちろん―――ルビィに面倒で危ない首輪をつけた悪魔が待っているのだから。



_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ