short/番外編

□放課後
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※バレンタイン数日後
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先生がいる場所には必ず同じ香りがある。
「すみません、お待たせちゃって」
「そうか?いつもこんなもんだろ」
先生の香りで欠かせないもの、まずひとつめ。
「なんだか…いつもより煙草吸ってるような気がして…」
先生は結構なヘビースモーカーだと思う。車の中と私の前では極力吸わないようにしてくれてるけど、時間が空くとどうしても吸いたくなるらしい。
「たった1、2本で気付くお前もすげぇよ…」
「そうですか?なんとなくです」
先生が煙草を吸ってる姿は嫌いじゃない。寧ろ好きだから先生の香りとして覚えてるんだと思う。
そしてふたつめ。向かっているのは校舎の裏にある駐車場。先生が大丈夫と言った時だけ車に乗せてもらうようになり、これはその時に気付いた香り。
「あれ?」
「どうした?」
「なんか、今日違う気がする…」
だけど今日は助手席のシートに座った瞬間に違和感を覚えた。先生の煙草の香りは同じだけど、他の何かが違う。
「どう、違うんだ?」
「うーん…いつもよりあまい感じ?がします…でも、気のせい、かなぁ…」
パタンと閉めた助手席の扉。うんうん悩みながらも思った感覚をそのまま伝えた。
「気のせいじゃねぇよ」
「え」
先生は苦笑いしながら車のサイドポケットから小さなボトルを取り出すと「これはお前用な」と私に手渡した。
「わたし、用?」
それは手のひらに収まるぐらいの小さなボトル。暗い車内では色がわからないけど、手の中で僅かな光を反射しながらきらきらと輝いている。「開けてみろ」と促されるままに、きゅ、と指先で蓋を捻れば
「わ…」
その瞬間、車に入った時に感じた少しだけ甘い香りがふわりと漂った。
「興味持ってただろ?」なんて、確かに一応お年頃だしこういう物に興味はある。だけどそれ以上に先生が身につけているものに興味を持っていたと言う方が正しい。
「あ、ありがとうございます…っ!」
「ちょうど変えてぇと思ってたし、これぐらいなら女がつけてもおかしくねぇと思ってよ」
それはわざわざ一緒のものを付けられるように選んでくれたってことだろうか。自分にとって都合の良い方にしか取れない言葉に「帰ったら付け方教えてやるな」と言う先生の声は嬉し過ぎて泣きたくなる気分に追い討ちをかけていた。

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バレンタインじゃなくても良い気がする…


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