short/番外編

□花軸
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【花軸】
多数が集合して咲く花の、支える軸となる茎

※奥さまin元親さんの職場、なお話。
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秋のはじまり、夜がほんの少し長くなり風が少しだけ冷たくなったこの時間。まだ人の気配も無くclosedの札が掛かった扉を押し開ける。
「あ、ごめんねー、まだちょっと準備中…ってこりゃ珍しいお客さんだ」
「忙しい時にすみません…」
扉が開くと同時に高く響くベルの音。それを合図に店内で一人、開店の準備をしていた彼が顔を上げた。
「どうしたの?久しぶりだね!」
「すみません、忙しい時間だとは思ったんですけど…」
広くない店内、こちらに気を向けてくれた彼に慌てて差し入れに持ってきたチョコレートを差し出す。
「これあんまり甘く無いから佐助さんも食べられると良いんだけど…」
「ん?俺様、甘いのもビターも平気だよ。遠慮なく戴くね」
「ほんと?それなら良かった」
ほっと小さく息をつけば受け取ってくれた彼も柔らかく笑みを浮かべてくれる。「旦那、呼んでくるからそこで待ってて」とカウンターの椅子を指し彼は足軽に厨房へと入って行った。

たった数時間前、自宅で見送った"旦那サマ"。急に来たことに驚くだろうか。それとも簡単に立ち寄れる距離じゃないここに来たことを怒るのだろうか。少し楽しみで少し不安。待っている時間がほんの少し長く感じた。
「おう、どうした?」
袖を捲りエプロンで手を拭きながら奥から出てきてくれた彼。家にいる時とはまた違う雰囲気の元親だが、顔を見ただけで思った以上にホッとしている自分がいる。
「ごめんね、忙しい時に」
「いや、それは構わねェけどよ…何かあったワケじゃねぇんだな?」
彼は私には勿体無いぐらいに優しい。いきなり訪ねてきた私を無碍に追い返すこともしないし迷惑そうな顔一つ浮かべない。
「うん…ごめんね、顔見たくなっただけなの」
そんな人を困らせるなんて私はなんて我が儘なことをしてるんだろう。ご飯も寝る時も一人で過ごすことはとっくに慣れていたはずなのに。
でも、もう大丈夫。元親の顔も見れたし、彼が帰ってくる時間まで一人で過ごせる。「邪魔してごめんなさい、そろそろ帰るね」と笑顔で告げ、ベルの取り付けられた扉へと向かった。

「名前」
扉に手を伸ばした時、彼の優しい声が背中に届く。
「ん?」
「ここで飯食ってけよ」
呆れたような笑みを浮かべカウンター越しに私を見る元親。掛けられた言葉に少し目を見開いたが「え、や、いいよ。忙しくなる時間だし…」と慌てて返した。
「帰りたくねェって顔してるクセに、無理矢理帰らせたりしねぇよ」
「…ぁ」
そんなに顔に出てたのだろうか。それとも彼の勘の良さでバレたのだろうか。「仕込み終わらせてくっから待ってろよ」と中に行ってしまった彼と、「今日は予約少ないから気にしなくて良いよ」なんて入れ違いに出てきた佐助さんの一言は私の小さな不安を一気に崩して行った。

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…元親のお店に行きたいですってなリクで一ノ瀬なぜか撃沈orzシチュがうまく浮かばなかったorzorzもっと精進しますorz企画参加ありがとうございました!


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