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□別に君の為じゃない
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*双子でも姉でも妹でも
「あきら」
「…"クン"ぐらいつけぇ名前」
端から見ても姿勢の悪いオトコが呆れたような溜め息を零す。
名前と呼ばれた女はそんな相手の反応に何も気付かない振りをしながら「ケーキ買ってかえろ」と男と良く似た黒い瞳を目先のコンビニに向けていた。
「けぇきぃ?なんや名前ちゃん、更に太る気ぃなん?」
「ちゃうわアホ」
「だったら何?」
「…明日クリスマスやん。やから」
先に続く言葉は口に出されなくても何となく聞こえてくる。
同じ高校の制服、違わない年、そんな男女が二人で歩けば色恋に勘違いされてもおかしくないが、この二人を一目見ればその関係を説明せずとも納得される良く似た顔。
男よりも幾らかは柔らかな雰囲気はあるが、その真っ黒な髪は彼女の控えめな印象をより強く見せていた。
「…好きやない」
「ほうか」
近付くコンビニを前に自分の意思を示せばそれ以上特に何を言うわけでもなく足を進めていく。
この男の言うことは"絶対"…と言うことは彼女に対しては全くないが、彼女に自分の意思を通す欲が無いところは昔からだ。
「…」
「、あきら?」
「名前ちゃん、…そろそろ"クン"付け覚えよか」
眉間にシワを寄せて顔を覗き込めば、ようやくぼんやりした黒目と目が合う。
「ん?」
もっとでっかい声出るやろ、つかクリスマスやからってなんやの、なんでボクにまでキミは気ぃ使うん、もっと、…もっとボクには我が儘言えばええのに。
言いたいことはたくさん浮かぶのに
「…ボク、プリンのが食べたい」
「ほうか」
結局頭に浮かんだことの一割も伝えられてはいないが、自分の言葉によって分かりづらい程度に上がった口角に自分もにんまりと笑みを作った。
(明日クリスマスやん。やから)
二人でパーティーしよか、なんて
(…べぇつにキミの為やないけどな)
title:)ツンデレな彼の台詞("確かに恋だった"より)
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