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□今日も平和です
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「ああああっ! お前らしつっこいんだよ!!」


ああ、いい天気だなぁと窓越しに空を眺めていると、隣の教室から叫び声が聞こえた。


「また?」
「うん、またみたい」
「生徒会の奴らも懲りないよなぁ」
「暇なのかねぇ」


教室内で聞こえるのは、何処か呆れたような言葉ばかり。
他のクラスではどうだか知らないが、このクラスに生徒会に興味のある人間など一人もいない。精々こうして雑談のネタになるくらいだ。

だが、最近ではその雑談に上る頻度が高い。

原因は二週間程前に編入してきた時期外れの転入生だ。なんとも見目麗しい美少年で、普通科への編入試験に満点合格した事もあってか転入早々注目の的だった、らしい。

詳しい経緯は知らないが、そんな転入生に生徒会の面々は興味を持ち、次々と虜になっていったのだという。


アホか。
と、思わなくもないが、以来生徒会役員達は何とか転入生を振り向かせようと追い掛け回しているらしい。
らしいというか、時々その様子を見掛けたりもする。教室どころか校舎自体かなり離れているのに。
わけがわからない。



隣の教室からは相変わらずバタバタと煩い音が響いてきている。特別棟まで来て何をやっているのだか。

「いい加減煩いよねぇ。今授業中だっていうのに」
「どうする? 黙らせる?」
「追い出す、に一票」
「同じく」
「俺も」
「じゃあ、隣の仕掛け起動させちゃおうか♪」
「がってん承知の助!」


級友が何やら壁に取り付けられた怪しげなレバーをガチャリと下ろすと、

ガッタン

と一際大きな音が響き、






隣の教室から断末魔のような悲鳴が聞こえた。






悲鳴は急速に――それこそほんの数秒のうちに――遠ざかり、聞こえなくなった。
一瞬シン…と静まりかえる教室。そして………


「やったぁーー!! 成功だ!!」
「よしハイタッチ☆」
「ほいハイタッチ★」
「なぁ、次があったら今度は俺な!」
「OK!…………ククッ、にしても、本当にアイツら良い実験体<モルモット>になってくれるよなァ」


このクラスの面々は生徒会にも転入生にも興味はない。

けれど、一般クラスの人間からは『奇人・変人・悪鬼の巣窟』と呼ばれる通称Sクラス、正確には『specialist』クラス――あらゆる分野の専門家を育てるクラス――の面々にとって実験体になってくれる人間は大歓迎なのだ。

先程作動したのは、試作中の最新の警備システムらしい。結果は良好だったようだ。



わいわいと騒ぐ級友達から視線を反らし、再び窓の外を見上げた。良い感じの曇り空だ。
思わず欠伸がこぼれた。


「ふぁあ……………いい天気だなぁ」







二年Sクラスは今日も平和です。


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