短編
□雨の中で、
4ページ/11ページ
彼女の傘が、時折、くるっと踊った。
次の日、このループした日常が、90度は変わった。
180度かもわからないけど、分度器がないから分からない。
彼女が、いつもの場所に、いなかった。
代わりに、人が沢山、沢山いた。
ざわざわ、ざわめいている。
皆の視線は、遥か上空に焦点を結んでいるらしい、オレも、そのあたりを見てみた。
な――
「あいつ…」
ビルの屋上に、長い黒髪をなびかせた傘差し少女がいる。
間違いない、あいつだ。
まさか、自殺?
そう思ったのは、ビルに入って階段を駆け上がって、屋上の彼女の後ろに立ったときだった。
「お前…何を…」
彼女は振り向いた。
ころころ、ころころ。
「飛び降りたら、私はどうなるんでしょう?」
――キレた。
「死ぬに決まってんだろ!何考えてんだよっ」