短編

□願い
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 最初は混乱したし、自分でもにわかには信じられないけど、どうもそういうことらしかった。

 例えばマラソン大会が嫌だから雨降れとか、サッカー部の試合に勝ちたいとか、気になるあの子の隣の席になりたいとか、そんな小さな願いだけど、何でも叶った。

 だからちょっと欲ばって、飛行機のファーストクラスに乗ってみたいとか、あいつにけんかで勝ちたいとか、頭が良くなりたいとか、そんな願いを願ってみた。
全部叶った。


 この世界は、僕の思うように動いていた。


「ねー、健一くんって、運動得意だよね?」

 小学校5年1組の教室で、隣の席の少女が尋ねてきた。
 彼女が例の気になるあの子。佐竹歩。

「え、うん」

 “健康に育つように”と願いをこめて“1”番目に生まれた僕は、健一という名前だった。

「それなら、明日なんて待ち遠しいでしょ」

「うん。運動会のことでしょ?」

「そう。――あーあ、いいなあ、健一くんは。あたしなんてぜんぜん運動駄目だもんなー」

 確かに。

「雨…降るといいね」

「だよね・・・ありがとう、あたしに気を使ってくれちゃって」

 くそう、そういうトコロが可愛いじゃねーかコノヤロ。
 これはなんとしても叶えてやらねば。
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