かけらことばのおんなのこ

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「こんにちは。初めまして」

 その人物はそう言って、ふわりと微笑む。
 途端に、俺の呼吸が止まった。

 次に言うべき言葉が、出てこない。

「えーと。やまとさん、で良いでしょうか」

「…………」

「…………」

「…………」

「……おーい」

「……ああっ! はい! いやえっと! て、店長はただいま外出中でありまして、そそその、私はバイトをしております者で、つまり―――」

 一気に息を吹き返した俺は、パニックに陥ってそんなようなことを口走る。
 それで、客が吹き出した。

「そんなに緊張しないでくださいよ。わかりました。彼はいないんですね。―――あなたは、お名前は?」

「あ、えっと、お、俺は西間慶太っていいます! 17歳、高校生です!」

「うん。そこまでは聞いてなかったかな」

「はっ! 申し訳ございません!」

「うん……軍隊じゃないから、やめよっか」

 呆れ口調で言いながら、それでも楽しそうに客の人物は目を細めた。
 動きに合わせて、ふんわりとしたセミロングの髪が揺れる。
 そんな光景に惹きつけられて、俺は彼女から目が離せなかった。

「じゃあ、僕はこれで帰ろうかな。やまとさんにお会いしたかったんだけど、いないみたいだし」

「あ、いや、すぐに戻るかと!」

「そうなの? でもいいや。なんかもう、そういう気分じゃなくなっちゃった」

「は、はい?」

「いいのいいの。西間くんは気にしないで。―――じゃあね」

「えっ、ちょっと、」

 俺は急いで彼女を引き止める言葉を探した。
 やまとに何の用だ? お前は誰だ? やまととはどんな関係なんだ?

「お名前、聞いてもいいですか!」

 しかし、口をついて出たのはそんな言葉。
 彼女は振り返って、切なげに眉をひそめた。
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