かけらことばのおんなのこ
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「……ノッカ」
火曜日『Cafe&Coffee すうぃーとびたー』の店長、ノッカに瓜二つだった。
あるいは、本人?
「美人だろ? なのに飾ってない性格でさ、親しみやすいんだ」
いつかノッカに対し俺が抱いた印象。
それと全く同じことを涼太が言った。
そういえば、のどかとノッカって、響きも似てるよな。
まさか。
「本名か?」
「ん?」
「山岸のどかって本名か? 芸名か?」
「本名らしいぜ。なんせずっと小さい頃からモデルやってるからな」
「……」
本名。
ノッカの本名はもしかしたら。もしかして。
「俺、」
興奮を隠しきれず、俺は涼太を笑顔で見上げた。
「もしかしたら、この人知ってる」
――今度は、俺が涼太の口を塞ぐ羽目になった。
* *
そんな訳で、火曜日。
俺は“あの茶店”の前に立っていた。
今日は涼太と蘭奈が一緒だ。
「ノッカさんがファッションモデルだったなんてすごいね! でも山岸のどかなんて聞いた事ない。あんまり有名じゃない人?」
相変わらず容赦ない蘭奈の言葉。
こいつには緊張とか遠慮って概念はないのか?
「まあ、正直な。陰じゃ近々グラビアとかポルノとか、そっちに移るんじゃないかとか騒がれてるぜ」
涼太が歯切れ悪く言った。
蘭奈があまり興味なさそうにしている脇で、俺の方がどきっとなる。
――女の体がただエロいだけだと思ったら大間違いよー!
彼女の正体がそうなら。そういう事情があるなら。
この台詞の訳も察しがつく。