かけらことばのおんなのこ

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「断じて違う」

「ノリ悪いなあ。だからさ、どこぞの宝で始まって塚で終わる歌劇団あるじゃん? あれの男役みたいなもんだよ」

「なるほどな。頭の悪い説明をありがとう」

「なんだと!」

 今度は反対に、蘭奈に頭を叩かれた。

「イテ」

「まったく。相変わらずデリカシーのない奴」

「相変わらず女々しくないお前に言われてもな」

「決めた。金曜はティアラさんに相談に行こうっと」

「もうやめてくださいお願いします。すみませんでした」

「分かれば良い」

 一生この話題を引きずられるんだろうか。
 女って怖い。

 俺はため息をついた。

「それにしても執事かあ。まず、接客からして出来る気がしないんだけど」

「慶太、営業スマイルとか苦手そうだしね」

「それ以前の問題だよ。俺だけ裏方とか駄目かなあ」

「当たり前じゃん」

「ちっ」

 厄介なことになったな。
 文化祭が憂鬱だ。

「あっ、そーだ! いいこと思いついちゃった!」

 突然、蘭奈が大げさなまでに明るい声を出した。

「な、なんだよ」

「なんでそんな嫌そうな顔してんのさ」

「だって絶対ろくでもないことだろ」

「素敵なアイデアだ、失礼な。慶太のためを思って……」

 蘭奈はキラキラ輝いた瞳で俺を見据えた。

「アルバイトすればいいんだよ! 文化祭まで」

 はい?

「いや、えっと、どこで? どんな?」

「決まってるじゃん。今日は月曜日だよ?」

 あ。
 まさか。
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