かけらことばのおんなのこ
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有田はずんずんとこちらに歩み寄り、俺と想の机を挟んだ向かいに腰を下ろした。
腕を組んで、凶悪なしかめ面を浮かべながら、俺のことを睨みつける。
「で、何の用? この泥棒」
「おい、プリクラのことを言ってるなら、犯人は俺じゃないぞ」
「どうせ沢田あたりだろ。実行犯なんかどうだっていいんだよ。問題はあんたが持ってるかどうかだ。持ってるんだろ?」
「お前さ……頼むからもうちょっと女の子らしく喋ろうよ。なんか泣きたくなってきちゃったからさ」
「じゃああんたが女々しく喋れば釣り合いが取れていいんじゃない?」
「う。何でそんな毒舌なの有田さん……」
俺は緊張しているのを見破られないようにわざとおどけてみせてから、懐を探り、問題のプリクラを取り出すと有田に差し出した。
「はい。これはお返しします。俺じゃないとはいえ、悪かったよ。ごめん」
有田は俺の手からプリクラをもぎ取ると、ちらりとそれに一瞥を投げ、それから無造作にポケットに突っ込んだ。
「それで?」
相変わらず不機嫌そうな有田の顔。
目は一度も合わせてくれず、店の外を見続けていた。
俺は意を決して、口を開く。
「あのさ、いつか俺、有田の誘いを断ったり、その上勉強の方が大事だとか言っただろ。あれ、その、悪かったと思って。ごめんなさい。でも、悪気があった訳じゃないんだ。そこは、分かってほしいというか」
俺の発言に有田は目を丸くした。ようやく、こちらを見た。
「俺は別にさ、恋愛とかそういうのが悪いって言いたかった訳じゃなくてさ。なんていうか、まだ若いのに恋愛を語るなんて格好悪いっていうか、そんな風に思ったからこその発言で。特に深い意味もないというか」
歯切れが悪い。
言い訳がましい。
分かってはいるが、どうにも上手く喋れない。
それでも、話すのをやめたら最後だと思って、俺は話し続ける。
「だからつまり、別に有田と付き合っているのが嫌とか、そういうことが言いたかった訳じゃないんだ、というか」
何回“というか”と言ったら俺は気が済むんだろうか。
「それで、だから」
「もういい。うるさい」
有田が落ち着いた声で、俺の言葉を遮った。