かけらことばのおんなのこ

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「うん。そうすれば、分かるから」

「……」

 そうか。
 想はいつも屋根裏にいるから、いつぞやのティアラと有田の会話だって聞いてたんだ。

「ティアラってやつと有田、やっぱり今回のこのことについて話してたのか? 泰都が言ってた通り、ティアラが絡んでるのか?」

「……言えない」

「なんで?」

「私、言ったら、だめ、思う。直接、話して」

 俯きながら言葉を紡ぐ想を見て、やっぱり彼女も何かを知っているんだと思った。
 でもそれを聞く相手は、想じゃない。

「分かった。有田に聞くよ。ごめんな、厄介なことに巻き込んで」

 想が慌てて振り返った。

「ううん! 厄介、違う!」

 食いつくような勢いの想に少し驚く。

「そっか。ありがとうな、想」

「……別にいい」

「そしたらついでにもう少し、巻き込まれてもらえる?」

「え?」

 今度は想が目を剥いて、俺を凝視してきた。
 今日の想は本当に色んな顔をする。
 俺は少しそれが嬉しくて、ふっと笑みを零した。

「有田とちゃんと話がしたいんだ。今、ここで」



 三十分ほど経ったとき、店の鐘がカラァンと間の抜けた音を立てた。
 机に頬杖をついてぼうっとしていた俺と想は、同時に店の入り口に顔を向ける。

「うわっ! なんか不気味……」

 店に入ってきた人物はいきなりそんな不躾な発言。
 これが初めての来店のくせに。

「いきなり文句、ひどい」

 想がつっけんどんに言い放って、その人物、有田蘭奈は目を見開いた。

「あ、あんたが、」

「そんな事、どうでも良い。こっち、来て」

 有田がかなりむっとした表情を見せたのが分かった。
 だめだやっぱりこの二人、相性が悪い。
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