かけらことばのおんなのこ

□てぃあらとたいと
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 ティアラがレジ机に座ってまどろんでいると、唐突に扉が荒々しく開いた。
 ティアラが驚いて目を覚ます。

「あ、いらっしゃ――、なんだ、泰都くん」

 扉を開けた川口泰都は少し険しい顔をしており、無言で店内を歩くとティアラの目の前に腰をおろした。

 今日は金曜日。
 ティアラの経営する雑貨屋『ブランコ』の日である。
 店内の物はレジ机とその両側に無造作に置かれた丸椅子以外、全てが商品である。
 とは店長ティアラの談なのだが、どういうわけか今はキリンを模した貯金箱しかない。

「商品、いくらなんでも少ないよ」

 それを受けて、泰都がぶっきらぼうに言った。

「いやあ、仕入れがなかなか難しくてさ。泰都くん、何かあったら持ってきてよ」

「腐っても雑貨屋でしょ……それじゃフリーマーケットじゃん」

「そうだねえ。だめだねえ。――はい、これ。ダージリン」

「アールグレイが良い」

「淹れてませんし。いらないならあたしが飲みますし」

 言うが早いか、ティアラはカップを持ち上げた。
 泰都はそれを目で追っていたが、ティアラの口が付くか付かないかのところで、

「飲む」

 短く言って手を差し出した。

「はい。どうぞ」

 ティアラは笑顔になって、泰都にカップを手渡した。
 その際に泰都の手の平が見えて、

「あらら。まっくろ……」

 墨か何かで塗りつぶしたらしく、手のひらが黒ずんでいるのに気づいた。

 泰都はそれには答えず、受け取ったカップに口をつける。
 ティアラが短く息を吐いた。

「また失敗したんだ、絵」

 カップから口を離した泰都はそっぽを向いて、小さく舌打ち。

「そうだよ。だから?」

「次は、うまくいくといいね」

「あーはいはい、そうだね。他人事みたいに」

「だって他人事だもん。仕方ないじゃん」

「……」

「でもさ、他人事だから、あたしは泰都くんを応援できる。頑張れーって」
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