かけらことばのおんなのこ
□はるせとつくし
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「そういえば、今大学通っているんですけど、」
「おや。月雫さんがですか?」
「ええ。意外でしょ?寮に入って、ギリギリ頑張ってます」
「へえ。驚きました」
「あ、でもこれは序の口でして。――実はその大学に、彼の西間慶太がいるんです」
「……へえ。彼が」
「驚きましたよ。思わぬところで再会しましたから。さすがといいますか、学部一の秀才です」
「流石ですね。向こうは、月雫さんのことは?」
「……。覚えてないみたい。まあ無理もないです。髪も切っちゃったし、服装も違いますから」
「…そうですか。残念ですね」
「まあ、今はどうでも、彼は確実に『かつての想を救ったヒーロー』です。そのことに変わりはないですから」
「ええ。彼には感謝の言葉もありませんね」
「全くです。他にも、蘭奈さんや順子さん、泰都さんに紗綾さん、想の店のお客様だった人はみんな」
「全くもって、その通りです」
「…そろそろ、おいとまさせていただきます」
「それが良いでしょう。お嬢様も、もうすぐお帰りになります」
「それは大変ですね。鉢合わせしないようにしないと」
「ええ。では。またお越しください。この時間帯は、お嬢様はいつも出ていますから」
「ありがとうございます。また来たいです。――では、また」
「さようなら。――あ、お待ちを。一つ聞いても?」
「はい?」
「藤名月雫というのは、本名ですか?」
「……。さあ、どうでしょうね?」